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「実業は強い」と証明するために 効率よくバレーに取り組む取捨選択【笠井季璃×岡本祐子監督(旭川実高)対談②】

エースでキャプテンの笠井季璃を擁し、1月の全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高)でベスト4入りを果たした旭川実高(北海道)。笠井と岡本祐子監督が大会を振り返った。第2回はチームの改革について。その取り組みは、笠井たちが2年生のころから始まっていた 【第1回】

 

 

岡本監督(右)と笠井

 

——高校までほとんど全国大会に出ていなかった選手たちが花を開かせた春高。3年生はほかの学年との違いはありましたか?

岡本監督(以下、岡本) この子たちは何が違うんだろう? 

 

笠井 個性が強烈ですかね?

 

岡本 確かに個性は強かった! 違う方向にいくときもあるけど、3年生は横のつながりがあって、「何かやってやろう」という気持ちがあったね。もめ方は私の想像を上回ってくるから、収めるのも大変だったけど(笑) キャプテンは大変だったと思う。

 

笠井 日々そういうことが起きた時期もあって。でも、そこだけに目を向けてしまうと後輩たちも気を遣ってしまうので、いかに見逃して、いかに向き合うかがすごく大変でした。

 

岡本 自由人ばかりで、特に(笠井がU19日本代表で不在だった)北海道インターハイは大変だった。いろんな意味ですごく爆発力がありましたよ(笑) やっぱり(笠井)季璃についていく選手が多いんだなと思いました。

 

——選手たちの髪型を含め、今年度は「伝統を変える」という言葉も聞きました。それはどういった経緯でしたか?

岡本 選手のころに経験して、私はどちらかというと指導者の型にはめるバレーが苦手でした。最後に必要なのは選手の感覚だと思っています。大学やVリーグ、石川祐希選手(ミラノ〔イタリア〕)のように海外に行ったり。最終的に自分の感覚でプレーできるようにならないと、先はないとずっと思っていました。

 今年度の選手たちは自分の意見を持っている選手が多いと感じていて、「いいものは残して、理由がないものはいらなくない?」という話になりました。私の性格ですかね。効率よくバレーをしたいので。

 

笠井 岡本先生に以前、「勝負に対して必要なものと必要ないものがある」と教えてもらったことが印象に残っていて。時間は限られているので、必要があることを自分で理解して、効率よく取り組んだほうがチーム、そして自分のスキルアップのためになると思います。1年間、それを考えながら取り組んできました。

 

岡本 女子を指導していて感じるのは、どちらかというと感情が先に出てしまうこと。「嫌いだから話さない」ということもあるんです。でも、嫌いだとしても、コートの中で話すことは必要ですよね。「みんなで仲よくしなさい」ということではなくて、「必要なことをしなさい」と伝えていました。

 

 

笠井(2列目右から3番目)を中心に、一体となったチーム

 

——その中で大事にしてこられたことは何でしょうか?

岡本 自分も含め、人は楽しいことを選んでしまうので、時間をコーディネートして自分を律する「自律」をテーマにしないといけないと思いました。時間を与えてみないと、必要なことと必要ではないことがわかりません。生活面も含めて大幅に変えたのが、季璃たちが2年生のときでした。

 

笠井 2年生で寮から下宿になり、環境が大幅に変わりました。寮では常に全員で行動している感覚でしたが、下宿では部屋で自分と向き合う時間が増えました。最初は慣れないことが多かったですが、バレーのことについても、より深く考えることができたと思います。

 

岡本 創部当初に建てた寮だったので、老朽化してしまって下宿にせざるをえなかったのが正直なところです。寮がなくなるのは悲しくて、ほんとうは思い出に浸っていたかったんですけど(笑) でも、先に進まないといけないと覚悟を決めました。最初はほんとうにだらしなかったり、言いたいことはいっぱいありました。でも、私の前ではいい子になっても、私がいないところで好き勝手するようではいけません。最後は「勝ちたかったらどうしないといけないの?」というところに落とし込むようにしていました。

 「寮がなくなって、チームワークが悪くなったよね」と言われるのがすごく嫌で、だからこそ結果を残したいと思っていました。季璃たちをスカウトするときによく「(3年後を)改革の年にしたい」と言っていて。振り回されながら、すごくよく頑張ってくれたと思います。

 

笠井 自分たちがつくったり、排除したルールがあるからこそ結果を残さないといけない。好き勝手やらせてもらっているからこそ勝たないと、ワガママになってしまうと思っていました。3年生のなかでも「言ったからにはやろうな」と日ごろから言っていました。

 

岡本 「今、言ったな?」とよく言っていたね。でも、それが「じゃあ、やれよ」ということではなくて、「じゃあ、やるぞ」と。言った人と一緒にやってくれるので、頼もしかったです。

 

笠井 勝つために実業(旭川実高)に来たので。伝統があって、自分の中では北海道のNo.1であり続けている高校だと思っていました。でも、最近はなかなか全国の上位に入れていなかったので、高校生の間に必ずもう1回花を咲かせて、「実業は強いんだぞ」と証明したくて。それができた1年だったと思います。

 

 

笠井季璃

かさい・りり/身長175㎝/最高到達点306㎝/別海中央中(北海道)/アウトサイドヒッター

2022年度はU18日本代表、23年度はU19日本代表に選ばれた世代屈指のエース。V1女子のトヨタ車体クインシーズに内定し、210日のプレステージ・インターナショナルアランマーレ戦で早速デビュー

 

岡本祐子

おかもと・ゆうこ/旭川実高→早稲田大

早稲田大卒業後は東洋紡、栗山米菓でプレー。旭川実高のコーチを経て、2010年に監督就任

 

取材/田中風太(編集部)

写真/中川和泉(NBP)、山田壮司

 

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