中学生たちの発信力が高まっている理由は? 選抜事業での光景に見た学校教育との相互関係
- 中学生
- 2024.03.13
自ら手を挙げて、進行役を買って出た3人
議事進行をスムーズに行う中学生たちの姿
驚きは続いた。そうして始まった午後の練習の冒頭で、山岡先生は「どういう練習をしたい?」と40名近い参加者たちに投げかける。ホワイトボードに意見を書く役を募ると、すぐに枩田大広(福井工大附福井中〔福井〕3年)、奥田優人(松任中〔石川〕3年)、城山歓太(城北中〔広島〕3年)の3名が手を挙げた。
その3人が進行役を務めたわけだが、なかなか意見が出ていないなか、城山が提案した。
「一度、2、3人で話して、意見を出し合おう」
そうして、グループごとに活発的に話し合いが行われ、最終的に建設的な意見交換がなされたのである。
恐れ入った。社会人になっても、会議や話し合いの場を進めるのに苦労することもあるのだが(筆者の経験上で申し訳ない)、中学生たちが自ら議事進行を、それもスムーズな方法を交えて行なっているのだ。
山岡先生に聞いてみる。これは一体…?
「まずは隣の子と話してみよう、というのが、今の中学校の授業のスタイルなんです。まずは隣や周りの子と話してみて、その考えを共有して、全体に伝えていく、というのが」
練習の合間も自然と輪になったり、円陣を組むような姿が見られた
「主体的・対話的で深い学び」に取り組む現在の教育現場
ここに、アクティブラーニングという単語がある。学習指導要領において、現時点では「主体的・対話的で深い学び」と称されているものだ。これが現在の学校教育におけるスタイルになっているそうで、日本中体連の小澤秋仁部長(三宅中〔東京〕)はこのように解説する。
「これまでは、“チョーク&トーク”つまり、黒板を使って教員が話す、という知識詰め込み型の授業を施していました。ですが、グローバル化を進めていくなかで、自分の考えを持ち、意思を持って行動していかなければならない、という観点から、アクティブラーニングが始まり、今の『主体的・対話的で深い学び』に至っています。
例えば、グループワークが多くなったのも一つです。教員が一方的に教えるのではなく、まずは自分の意見をもとに2人組、3人組で交換しましょう、と。ただ、やはり自分の意見を発信することが難しい子もいますから、学校によってはファシリテーターつまり活発的に議事進行を務める役を育てることにも注力し、意見を引き出す力を養いながら、意見交換する仕組みをつくるようにもしています」
それは、今回の合宿で中学生たちが見せた姿とリンクして映る。
女子でもグループごとに分かれて、メニューに取り組んだ