中学選抜の紅野花歩は「バレーが嫌いだった」。190㎝の有望選手を変えた日の丸での経験とは
- アンダーエイジ
- 2024.03.23
バレーボールの中学生世代の強化事業は、今年2月の全国中学生選抜(以下、全中選抜)の海外遠征をもって終了。令和5年度の中学3年生たちは春から高校のステージに上がる。その中でも、この1年で「見違えるように変わった」という声が聞かれるのが、紅野花歩(八王子実践中〔東京〕3年)である。
紅野花歩(こうの・かほ/八王子実践中〔東京〕3年/身長190㎝/ミドルブロッカー)
静岡出身。強豪校には「行く気がなかった」という紅野花歩
もし近い将来、紅野花歩という名前が、本人にとっての目標でもあるシニアの日本代表に並んだとき、きっと2023年がターニングポイントだったと言えるに違いない。それは本人も、そして彼女を見てきた周囲も口をそろえるはずだ。
静岡県伊豆の国市出身。バレーボールは小学5年生から、学校の友人がやっていたこと、また『ハイキュー!!』を見ていた影響もあって始めた。けれども、活動は週2回ほど、それも一回の練習時間は2時間程度であり、地区大会では下位の成績がもっぱら。趣味は「寝ること」で、のんびりした性格。それでも紅野には武器があった。小学6年生で、身長は182㎝もあったのである。
そんなポテンシャルを評価し、東京の名門・八王子実践中がスカウトに足を運び、紅野本人いわく「練習に一回も行かずに」進学を決意する。
「もともと、行く気は全然なかったんですけどね。正直、親元を離れるのが怖かったですし、小学校の友だちと離れるのが嫌だったので。けれども、私に対して『身長が高いだけでしょ』という声もあって、それを見返したい気持ちで強豪に行くことに決めました」
昨年末のJOC杯東京都選抜に選ばれ、主力を担った
ふさぎこみ、競技への意欲もなかった中学生活序盤
とはいえ、小学生時代に経験したレベルと、全国大会常連の中学では雲泥の差。同級生の米谷かおりは当時の姿をこのように振り返る。
「1年生の頃はサーブもスパイクも打てず、ネットにかかったり。レシーブもできなくて、ほんとうにダメダメだったんですよ。それに、本人はバレーボールが大嫌いでしたね」
紅野自身も、それは認めるところだ。「体型が細いので、ひょろひょろしているように見えるだけに、『もっときびきび動け』とか(笑) 怒られたことも初めてだったので…」。越境のため寮生活であり、なおかつレベルの差をまざまざと味わう。そんな紅野だったが、悩んだときには家族に電話し、米谷らチームメートからは「3年間あるし、成長できるよ」と励ましの言葉を受けて、涙しながら中学生活を過ごす。
「先生もずっと怒るだけではなくて、アドバイスをくれたり、褒めてくれたりしたので、少しずつ乗り越えることができました」
ただ、経験不足や自信のなさもあっただろう。2022年秋、中学2年生で全中選抜の第一次合宿に参加した際には、その場の空気に耐えられず体調を崩した。アンダーエイジカテゴリー日本代表の候補選手として選考強化合宿に加わっても、まるで言葉を発することはなかった。
高さを生かしたプレーが真価を発揮しだしたのは中学3年生からだった