中学選抜の紅野花歩は「バレーが嫌いだった」。190㎝の有望選手を変えた日の丸での経験とは
- アンダーエイジ
- 2024.03.23
全中選抜女子の最長身選手として前衛で存在感を放った
第二次合宿では積極的な姿が見られた全中選抜。いざ本番は…
やがて昨年末のJOCジュニアオリンピックカップ第37回全国都道府県対抗中学大会で次世代有望選手に選出。全中選抜の海外遠征メンバーにも選ばれた。
その第二次合宿では、ミーティングや練習の合間も積極的に発言する紅野の姿が。そのチームでキャプテンを務める忠願寺も「(紅野)花歩からもたくさん提案してくれますし、今では私から『副キャプテンをやってほしい』と言えるくらい、とても信頼しています。ほんとうに花歩の成長には、びっくりです」と目を丸くした。
そうして臨んだ海外遠征本番。意気揚々とイタリアにやってくると思いきや、現地について2日目、クラブイタリアとの親善試合を前に紅野は涙していた。その横に付き添いアドバイスを送っていた、女子U16日本代表監督の三枝大地氏は指摘する。
「まだまだ自分のことしか見ていないんですね。自分のプレーがうまくいかないと、『あぁ…』となってしまい、それが表情に出てしまう。それは周りにも影響を与えてしまうものですから」
クラブイタリアとの試合直前、涙する紅野にアドバイスを送る三枝氏
遠征最後のミーティングで、仲間を前に立てた誓い
意欲的に取り組めるようになった姿は、周りにとって刺激にもなった。それはカテゴリーを問わず、日本代表のようにトップをいくものたちが持つ“影響力”といえるだろう。紅野自身も日の丸をつけるプレーヤーとして身にまとい始めた。だからこそ、次のステップに進む必要がある、というわけだ。
「満足している部分はあると思います。ですが、うまくいくようになったからこそ、その先にいかなければ。自分のプレーをこう伸ばしたい、という思いがあるからこそ成長するんですね。アタックに関しても今はただ『打ちたい』しかない。今後は『どうやれば、これが打てるようになるか』を本人の中で明確する必要があります。その信念を持ってもらいたい」(三枝氏)
遠征の最中、紅野は「ずっと号泣していますよ」とこぼした。それはきっと「バレーボールが嫌いだった」頃に流していた涙とは違う。自分と向き合った時に湧き上がるのは、成長への意欲だ。
全中選抜女子がイタリアで設けた最後のミーティングで、紅野は全員を前に「もっともっと強くなります」と力強く口にした。そのとき着ていたスウェットパーカーの背中にはローマ字で「TSUYOKUNARU」の言葉が。偶然か、それとも彼女なりの意思表示か。その誓いとともに、紅野のバレーボール人生はこれからも続く。
(文・写真/坂口功将)
遠征最後のミーティングで力強く、さらなる成長を誓った
全中選抜海外遠征の模様は「月刊バレーボール」4月号に掲載!!
【ギャラリー】190㎝の将来有望選手 紅野花歩の海外遠征での様子〔10点〕