WD名古屋退団のクレクが左腕に刻んだタトゥーの正体。「覚えておきたかった」と明かす“思い出の証し”とは
- SV男子
- 2024.04.06
バレーボールの2023-24 Vリーグ、DIVISION1 MEN(V1男子)は3月31日に閉幕。すでに退団を発表している選手もおり、ウルフドッグス名古屋のバルトシュ・クレクもその一人。世界屈指のスター選手で、チームにリーグタイトルをもたらした。そのクレクの素顔と、ラストシーズンに示したチームへの愛の形をつづる。
バルトシュ・クレク(Bartosz Kurek/1988年8月29日生まれ/身長205㎝/最高到達点:370㎝/ポーランド代表/オポジット)
2020-21シーズンからWD名古屋でプレー
誰もが、その魅力的な人間像に惹かれた。大きな体格に目いっぱいの優しさとファイティングスピリッツを宿し、いざバレーボールになると周囲を鼓舞しながら、自らはポイントゲッターとして得点を重ね、チームを勝利に導く。
実に、4シーズン。天皇杯、黒鷲旗、そしてVリーグ。主要大会のタイトルをすべて獲得し、その立役者であるクレクが日本でのプレーに終止符を打った。
思えば、WD名古屋と結ばれる運命だったのかもしれない。2020年、チームに合流するや、強烈スパイクのごときあいさつをお見舞いしている。
「ここに来るために、このタトゥーを入れてきました」
披露したのは左上腕部に刻まれた、狼のタトゥー。チームが、その名前のとおりユニフォームにも採用している“ウルフドッグス”とまるで似ていた。
と言っても、実際には2016年頃に彫ったもので、あくまでも偶然。けれども、初めて日本のクラブで戦うにあたり、ジョークを交えることでチームに溶け込もうとしていたのが想像できる。
WD名古屋に入団する前から左腕に彫られていた、狼のタトゥー
ユーモラスかつ純粋なまでに真面目。人柄のよさが印象的だった
もはや言うまでもないが、クレクはバレーボールシーンにおける超ビッグスター選手。2018年にはポーランド代表のエースとして世界選手権優勝とMVPに輝いている。
そんな大物プレーヤーの来日に、報道陣は必ずといっていいほど真っ先に質問をしたものだった。どうして日本を選んだのですか? と。
もちろん真摯(しんし)に回答するのだが、お決まりのように毎度聞かれるとあって、本人はやがて困惑する。チームスタッフに「こうも聞かれるなんて。僕は日本でプレーしてはだめだったのかい?」とぶつけたことも。純粋で真面目、ゆえに素直に受け取ってしまったのだろう。
クレクからすれば、一人のプロバレーボール選手として魅力的な環境でプレーする選択自体は至極当然といえるものだ。そうして選んだのがVリーグであり、WD名古屋だったのである。加えて日本という国自体は、ポーランド代表として来日したことは何度もあるし、キャリアにおける印象的なスパイクに、2009年にガイシホール(愛知)で行われたワールドグランドチャンピオンズカップでの一本を挙げていた。名古屋に縁を感じていたのは確かである。
今年3月17日、23-24シーズン最後のホームゲームとなったエントリオで退団セレモニーが行われた