バレーボールのVリーグは2023-24シーズンの全カテゴリー、全日程が終了。次のシーズンに控える新リーグへと移っていく。その23-24シーズンを振り返ると、DIVISION1 MEN(V1男子)がこれまでには見られなかった取り組みをしていた点が印象的だった。〔第1回:サントリーサンバーズ/全3回〕
23-24 V1男子を制したサントリーサンバーズ
スペシャルユニフォームの採用がスタンダードに
サッカー、野球、近年ではバスケットボールでも。国内、海外を問わず、各国のリーグでは各チームが1シーズンのなかで通常のユニフォーム(大体はホームとアウェーの2種)以外に、イベントや企画に合わせたスペシャルユニフォームを着用するのがスタンダードになっている。
対して、それらと市場規模や文化の違いはあるだろうが、バレーボール界は比較的おとなしめ。レギュラーユニフォームはたいてい2種類で、リベロだけカラーリングやスポンサーをアレンジする、といった具合だ。そして日本のVリーグでは最近になって、ユニフォームの提供先メーカーがホームゲームの冠となって、会場では専用ブースを設置、その試合で選手は特製ユニフォームを着用する、という試みがあった。メーカーのブランドイメージを広く発信したい、という狙いがうかがえる。
そんなか、23-24シーズンはメーカー主導というよりも、特別企画のもとに仕立てられたユニフォームが見られた。
サントリーはバレンタインデーにピンク色のユニフォームを着用
こうした企画ユニフォームを採用する際、最もスタンダードといえるのが、季節ごとのイベントや行事に沿ったデザインを採用するもの。実際にバレーボールのイタリア・セリエAでは、22/23シーズンにルーベやモデナが“クリスマス仕様”のユニフォームを採用している。世界中の大勢が胸を弾ませるイベントに即したというわけだ。
それと同じように企画ユニフォームを今季、採用したのがサントリーサンバーズ。今年2月10日、11日のホームゲームでは、全体のデザインはレギュラーモデルと同じでありながら、カラーリングを通常の赤色ではなくピンクで仕立てたユニフォーム(special editionユニフォームとチームは表記)を採用した。これはバレンタインデー特別企画のもとに実現したものだ。
このデザインについて山村宏太監督は「ピンクは恥ずかしさを覚えました」と泣き顔を浮かべたが(自身もピンクのポロシャツを試合時は着用)、「サンバーズの場合は女性のファン層が厚く、そこをターゲットにする企画を通して、それを強固なものにできれば。加えて、例えば一緒に男性を誘ってもらうことで、男性ファンも増やすことにつながればいいなと思います」と期待を寄せていた。
なお、このユニフォームは選手の実着用品をプレゼントする企画として展開され、ファンにとっては超レアなお宝をゲットする機会となった。
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ピンクのカラーリング自体は少数派でも、スポーツ界の定番
さて、ピンク色のユニフォーム自体はスポーツ界を見渡しても少数派。もっとも、23/24クラブシーズンをフランス・リーグAで戦ったバレーボール男子日本代表の宮浦健人が所属したパリが、チームカラーの濃い青色“Bluモデル”のほかに“Rosaモデル”として淡いピンク色を採用していた。
サッカー界ではアルゼンチン代表のリオネル・メッシが所属するMLS(アメリカ)のインテル・マイアミが広く知られ、セリエA(イタリア)の名門ユベントスも数年おきに取り入れている。プロ野球では90年代に千葉ロッテマリーンズがピンク色を用いていた時期もあった。
数少ないとはいえ、ピンク自体はプロ野球でもファン向けの応援ユニフォームとしては定番。また、野球の大谷翔平が活躍するMLB(アメリカ)では毎年5月の「Happy Mather’s day(=母の日)」に全チームがピンクに染まる。これは乳がん検診の啓発キャンペーンの一環であり、そこでのギア(ユニフォームやバット)はオークションにかけられチャリティー活動に充てられる。
こうした社会的意義を伴った企画ユニフォームも増えており、バレーボール界でも先述のモデナが23/24シーズンのクリスマスシーズンに採用したカラフルな特製ジャージは、地元の保健団体が手がける「エンジョイカラーケアプロジェクト」とのコラボ。販売収益の一部は、小児ケアを主とするプロジェクトに寄付されたという。
ファンの拡大はもちろん欠かせないが、サントリーの鮮やかなピンク色ユニフォームを見ると、この先、社会的意義を伴うジャージが日本でも登場するきっかけになればいいなと感じた。
(文/坂口功将)
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