バレーボールのVリーグは2023-24シーズンの全カテゴリー、全日程が終了。次のシーズンに控える新リーグへと移っていく。その23-24シーズンを振り返ると、DIVISION1 MEN(V1男子)がこれまでには見られなかった取り組みをしていた点が印象的だった。〔最終回:東レアローズ/全3回〕
故・藤井直伸さんの追悼ユニフォームを着用した東レアローズ
サントリーサンバーズがバレンタインデーにちなんだ色合いを用い、パナソニックパンサーズは他競技とコラボを展開、東京グレートベアーズはシーズン後半に3番目のユニフォームを発表し、ウルフドッグス名古屋もサプライヤーオリジナルデザインを採用するなど、限定的な“企画ユニフォーム”が数多く見られた23-24シーズンのVリーグ。
そのなかでも、この一着は特別だった。東レアローズが今年3月16日のホームゲーム沼津大会で着用したユニフォーム、それは2023年3月10日に逝去した藤井直伸さんをモチーフにしたデザインだった。
この日は「藤井直伸メモリアルマッチ」と銘打たれた特別追悼試合。選手たちは青色をベースに(リベロは白)、前面にはトスを上げる藤井さんの姿と在籍当時の背番号「21」。また、裾の部分には「Our hearts are always one(=心はひとつ)」の文字が記されていた。またレギュラーモデルでは背面の腰あたりに、23-24シーズンから採用する宇宙技術由来の機能性を示す文字が施されているが、その部分もこの試合限りのものにアレンジ。なかでも「FAN」「21」の文字が目を引く仕上がりとなっていた。
「一緒に戦っているんだ、と感じるユニフォーム」(富田)
スポーツ界を見渡すと、チームが故人への弔意をユニフォームに落とし込むケースはこれまでにもある。喪章はその一つであるし、野球のMLB(アメリカ)では生前のフォームや愛称、背番号を模ったようなオリジナリティあふれるパッチを装着したり、またサッカーのセリエA(イタリア)ではナポリがチームにリーグタイトルをもたらした英雄ディエゴ・マラドーナ(2020年に他界)の肖像と指紋をモチーフにした特別デザインを採用した(のちに裁判で使用禁止になったが…)。
今回、藤井さんへの哀悼の意が込められた一着に選手たちも思いを馳せ、ミドルブロッカーの髙橋健太郎は「藤井さんのモーションをいちばん近くで見るというポジション。彼のモーションが好きで、これに育てていただきました。その姿を背負って勝てたことを誇りに思います」と、前面にプリントされた藤井さんのセットアップ姿に感無量。エースの富田将馬も「実際にトスを上げていたのは酒井啓輔選手ですが、どこか(藤井さんと)被って見える場面が何度かありました。一緒に戦っているんだ、と感じるユニフォームでした」と明かした。
東レが追悼試合を催したことはもちろん、ユニフォームを通して偲んだことは、チームにとって藤井さんがどれほど大きな存在であったかを意味している。なんとも趣き深い一着だった。
※選手所属は2023-24シーズンのもの
(文・写真/坂口功将)
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【ギャラリー】東レアローズが藤井さんへ捧げた特別追悼試合の模様