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笠井季璃(トヨタ車体) Vリーグの壁も成長のきっかけに 「ほんとうに幸せ。うまくいかないことも楽しい」

5月1日〜6日に行われた第72回黒鷲旗全日本男女選抜大会で、トヨタ車体クインシーズは準々決勝で敗退。アンダーエイジカテゴリー日本代表として活躍し、春高ではベスト4入りを果たした笠井季璃は、内定シーズンを終えた。Vリーグの壁に当たる日々を、充実した表情で振り返った

 

 

気迫あふれる笠井のプレースタイルは、チームカラーにマッチ

 

 劣勢のときこそ、笠井季璃の存在感は際立つ。準々決勝の日立Astemoリヴァーレ戦、セットカウント0-2の第3セット。19-22でタイムアウトを迎えると、輪の中心で声を響かせた。

 「もう1回、もう1回! まだ3点差だよ!」

 

 高校を卒業したばかりで、チームに合流してわずか数ヵ月。第3セットに再びコートに立ったものの、第1セットは「狙いすぎていた」とミスを重ね、途中交代を命じられていた。下を向く理由を探せばいくらでもあるが、いつだって笠井はうつむかない。

「自分がコートに入ったときは、『まだ負けていないよ。なんならこっちのほうが勝っているから!』と言いました。とにかく流れを持ってきたくて。どんなに(年齢が)下であろうと、チームの一員としてコートに入ったらやるしかない。そこは(高校時代から)変えずにやっています」

 

 その思いは届かずセットを落とし、勝利に導くことはできなかった。「上がってきたトスを思いきり打ちすぎているというか。心は熱くいたいけど、頭は冷静でいないと。そういうところをもう1回、次のシーズンは見直したいと思います」。悔しそうにそう語りながらも、その目には強い力が宿っていた。

 

 旭川実高(北海道)では1年生時からエースとして活躍し、2年生時にはU18アジア選手権大会でキャプテンとして優勝。そして、3年生時にはU19世界選手権大会で4位に貢献した。国際舞台を経てレベルアップした姿を見せ、その後の国体、春高ではベスト4入りの立役者に。だが、「点を決めることが当たり前だった」高校時代とは違い、トヨタ車体加入後はレベルの差を痛感してきた。

「勢いだけで通用しないのがVリーグの世界。思いきり打っても拾われてしまいます。逆にブロックアウトやフェイントなど、頭を使った点の取り方のほうが、長期的に見ると相手も対策しづらい。そういったうまくて強い選手になりたいです」

 

「感覚はつかめてきた」というバックアタックなど、力強くスパイクを放つシーンも

 

「毎日が壁です」と言うが、その表情はどこかうれしそうだ。

「ほんとうに幸せというか、うまくいかないことも楽しい。うまくいかなくて外されることもしょっちゅうあるんですけど(笑) そういうときにどうすればいいかを客観的に考えています。すべてプラスにしか考えていないので」

 

 高校2年生時に初めて世界を相手に戦い、目標は「オリンピックで金メダルを取ること」とブレない。「そこしか目指してないので。今はどういう結果であれ、必ず成長につながると思いいます。ここで折れることなく頑張っていきたいです」。成功も失敗も、すべて力に変えていく。

 

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金蘭会高と念願の初対戦

胸に刻みたい原点

 

 グループ戦では「高校3年間でいちばん対戦したかった」という金蘭会高(大阪)と初対戦。U19日本代表でともに戦った大森咲愛、西川凜ら顔なじみの選手が見せるハイレベルなプレーに対し、「(西村)美波や(大森)咲愛が上手なブロックアウトもそうですし、ディフェンスでは1点への執着。高校生の何が何でも落とさないという気持ちを忘れずに、これからやっていきたいです」と原点を再確認した。

 ただ、相手リベロの西川にディグをされた場面には「正面に打って捕られて、(西川)凜と勝負しすぎました」と苦笑い。「次はぶっとばせるようにします!」とパワーアップを誓った。

 

金蘭会高後、西川(左)と記念撮影する笠井

 

笠井 季璃

かさい・りり/2005422日生まれ/身長175㎝/最高到達点305㎝/旭川実高(北海道)出身/アウトサイドヒッター

 

文/田中風太(編集部)

写真/山岡邦彦(NBP)、編集部

 

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