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春高2025

ニコラ・グルビッチ連載②ポーランド代表の強化につながった“実りある時間”。指導者としての願いは「選手たちが最高のバレーボールをする」こと

  • コラム
  • 2024.06.08

 今夏のパリオリンピックで金メダル候補筆頭と評される男子ポーランド代表。2022年から始まったオリンピックサイクルでチームを指揮するのは、バレーボール界における名プレーヤーの一人、ニコラ・グルビッチその人だ。自身も2000年のシドニーオリンピックでは母国のユーゴスラビア(当時)に初の金メダルをもたらした功績を持つ。その人物像そして代表監督としての思いに独占インタビューで迫る【その②/全4回】

 

 

ニコラ・グルビッチ(左から2番目/Nikola Grbić/1973年9月6日生まれ/セルビア国籍/男子ポーランド代表監督/シドニーオリンピック金メダル)【写真:CEV】

 

ミスを恐れながらプレーすることを「好まない」とグルビッチ監督

 

 男子ポーランド代表のエース、アレクサンダル・シリフカは、チームを指揮するグルビッチ監督からの要求は「厳しい」と表現した。確かに記憶にあるのは、1年前のネーションズリーグ予選ラウンド第1週最終戦のこと。この試合でポーランドは、主力メンバー不在のセルビアに対してストレート負けを喫した。グルビッチ監督は試合後すぐさま選手たちを集め、その場でミーティングを行っている。観客の目の前、それもベンチで、だ。そこで伝えたこととは。

「まず選手たちには『私は、試合に向けてこのような向き合い方を好まない』と伝えました。彼らは見るからに試合中、恐れを抱きながらプレーしていた。ミスすることへの恐れ、です。ただ、このレベルにおいてミスを恐れるのであれば、仕事を変えたほうがいい。なぜなら、それは到底受け入れられることではないからです。昨晩、コートでやるべきことについて長いミーティングをしたにも関わらず、このざまでした。とてもがっかりしていますよ。私が彼らに求めたことは今日、何も実現できませんでした」

 

 グルビッチ監督は落胆を隠さなかった。その言葉の節々から、闘将と称されるゆえんが感じられた。

「私はただ試合でバレーボールをするためだけに準備をしているわけではありません。強いチームに勝つために何が必要かをわかっている。だからこそ、体育館やコート内で会話し、ミーティングを重ねて準備をしているのです」

 チームの関係者が明かすに、ロッカールームでもグルビッチ監督は長く会話する時間を設ける。それがコーチとしてのアプローチなのだ。

 

 

20/21シーズンのCEVチャンピオンズリーグを制した瞬間、コートに突っ伏した【写真:CEV】

 

ポーランドの強豪ケンジェジン-コジエで欧州クラブタイトルを獲得

 

 現在の男子ポーランド代表監督に就任したのは2022年から。その前段階として、ポーランド・プラスリーガのケンジェジン-コジエ(ZAKSA=ザクサの名称が一般的)で2019/20シーズンから2季、指揮を執ったことはアドバンテージにつながったようだ。特に20/21シーズンは国内二冠を達成、最後はCEVチャンピオンズリーグ制覇を遂げている。

 

「あそこで、現在のポーランド代表メンバーの多くと知り合えたことは大きかったですね。その分、代表において彼らが問題を抱えたときも、何を望んでいるか、そのうえでどんな練習が必要か、また、それを説明することがとてもやりやすいです。それにザクサで過ごした時間そのものが、コーチとしての私を成長させてくれました。選手たちから素晴らしいフォードバックをもらえましたし、お互いにとって実りある時間でした。

 私自身がよりよい指導者になることができましたし、代表の監督として仕事をするうえで多いに役立ちました。彼らのメンタリティーを学び、モチベーションを高め、そして一緒に戦う方法を学べた。だからこそ今、いい協力関係を結べています」

 

 20/21シーズンのCEVチャンピオンズリーグ決勝のラインナップを見ると、シリフカの対角にカミル・セメニウクが入り、オポジットはウーカシュ・カチュマレク、ミドルブロッカーはヤクプ・コハノフスキといずれも今のポーランド代表で主力を張る面々。なお、シリフカはそこでMVPに輝いている。

 

 グルビッチ監督は言う。自身が成長すること、それは指導者であれ、選手だった頃から変わらぬ思いなのだと。

「私は常に向上しよう、よくなろう、そして新しいことを学ぼうという思いで過ごしてきました。そして指導者になった今も、自分の知識やコーチングが選手たちにどのような影響を与えるかを確認しながら、それを応用してさらに生かしていこうと考えています。最終的には、一緒に戦っているすべての選手から最大限の力を引き出すことが私の仕事です。

 チームのポテンシャルを最高まで引き上げる。それが誰であろうとも自分のチームにいる限りは、最高のバレーボールをしてほしい。そこに向かって、ともに歩んでいくわけです」

 

 最高のバレーボールを。今夏、それを実現する舞台がパリオリンピックとなる。そこに至るまでの歩みとは。

【第3回に続く】

 

(取材・文/坂口功将)

 

■ニコラ・グルビッチ連載①「彼はレジェンド」「限界まで僕たちを押し上げる」ポーランド代表選手たちが語るその監督像

 

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