FIVB(国際バレーボール連盟)は7月3日、SNS上でネーションズリーグ2024における“グリーンカードウィナーズ”を発表し、男子はスロベニア、女子はドミニカ共和国を選出した。グリーンカードとは相手からチャレンジがあった際に、自己申告をした選手に提示されるもの。その回数が今大会を通して最も多かったのが男子スロベニア代表だったわけだが、そこで思い出したのはキャプテンのティネ・ウルナウトが見せたあるシーンだった。
2023年10月7日、日本vs.スロベニア。パリオリンピックの切符が懸かった試合でのワンシーン
取り立てて触れることではないかもしれない。相手がチャレンジ(ビデオ判定)をすれば、そこで明らかになる。審判がジャッジした以上、真相を口にしなくても“嘘つき”なんてとがめられることはない。
それは昨年10月7日のパリ五輪予選/ワールドカップバレー2023での一コマだった。この日は大会6日目、日本とスロベニアは1敗どうしであり、勝ったほうがパリ行きの切符をつかむ直接対決となっていた。第1セットは日本が先取。続く第2セットは8-8からスロベニアが3連続得点をあげて一気に突き放そうとしていた。
続くプレーで日本はサーブレシーブから西田有志がスパイクを放つと、アウトの判定に。そこで日本がチャレンジを要求すると、ブロックに跳んでいたスロベニアのウルナウトがすぐさま審判に申告した。タッチがあった、と。
スロベニアにとってはブレイクを切られるかたちになり、やがて西田のサービスエースで12-12に追いつかれると、その後、拮抗した展開の末に第2セットも日本に奪われる。結果的に日本にストレートで敗れ、パリオリンピックの出場権獲得は今年のネーションズリーグに持ち越しとなった。
「これが私にとってのフェアプレー、スポーツマンシップ、そしてリスペクト」(ウルナウト)
あの自己申告で流れが変わった、と言うのは極論であるし、あくまでもきわどい判定の末に記録された1点に過ぎない。
だが何より、そのときにウルナウトが見せたほほえみが印象的だった。負けられない大勝負の場だというのに、正直者であることを選んだ理由とは。翌日、本人に聞いてみたところ、こんな思いを明かしてくれた。
「誰かがいいプレーをしたとき、誰かがいい行いをしたとき、それを尊重することがいちばん大切だと私は考えています。私は日本チームを尊敬していますし、彼らが素晴らしいプレーをしたとき、私も自分たちのチームに対してそうありたいと願っています。
ブロックタッチでしたよね。確かに私は自ら手を挙げて、ワンタッチを伝えました。それが私にとってのフェアプレーであり、スポーツマンシップ、そして他者へのリスペクトなのです」
今の流れを切りたくない。相手に休息する暇を与えたくない。相手チームからチャレンジの要求があった際の自己申告には、そんな思惑だってあるだろう。それでも、フェアプレーの精神とスポーツマンシップは称えられるべき、いやむしろ、コート上にあって当然のものだ。
一般社団法人スポーツマンシップ協会は、スポーツマンシップを「Good gameを実現しようとする心構え」と定義している。ならば、このときのウルナウトはまぎれもなく、その精神の体現者だった。
その選手が先頭に立つ男子スロベニア代表。グリーンカードウィナーとなったことに賛辞を送ると同時に、これからも日本と対戦する際にはハイレベルかつ見応え十分のグッドゲームを演じてくれることを期待したい。
(取材/坂口功将)
【動画】VNL2024準決勝日本 vs. スロベニア ハイライト動画
HISTORY FOR TEAM JAPAN 🇯🇵!
— Volleyball World (@volleyballworld) June 29, 2024
After 47 years, they are back in the championship match of a major world volleyball event.
🏆 They will face France 🇫🇷 in the VNL 🥇 match tomorrow June 30.
📺 LIVE ON VBTV.
🏐 #VNLFinals #VNL2024 #VNL #volleyball pic.twitter.com/6d2pg7fL5i