「2人の顔がよぎるんです」東レ移籍の青柳京古が明かした岩崎こよみと山岸あかねへの思いと“埼玉上尾愛”
- SV女子
- 2024.07.08
今年の黒鷲旗ではベテランとしてチームを牽引した
「ここがああだったね。明日はこうしよう」と言い合える埼玉上尾のスタイル
選手の意思を尊重することもしかり。そうしたポジティブな雰囲気は埼玉上尾ならでは、ともいえる。それは試合後に表れるのだと青柳は話す。
「ほんとうに毎試合ですよ。特に(サラ・)ロゾが話していました。彼女の友人が見にきた試合で負けてしまったんですけど、私たちを見て『全然、負けたようなチームに見えない』と言っていたよ、って。
確かに土曜日の試合で負けても、バスの中では『明日頑張ろうよ!! 明日、明日』という言葉が出ていますし、試合直後のベンチでも『ここがああだったね。明日はこうしよう』と切り替えていますからね」
埼玉上尾の一員として青柳が過ごした最後の黒鷲旗もそうだった。予選グループ戦の2日目にKUROBE アクアフェアリーズに敗れたことが、結果として敗退に大きく響いたわけだが、そこでもこんな一幕があった。
「トレーナーの山内亮さんがダウンをしながら、『会場を出るまでに10回はみんなに、ありがとう、と言おうな!!』と提案したんです。そうしたら選手全員、『亮さん、ストレッチありがとう!!』とか。『明日も頑張ろうな!!』『うん、ありがとう』『ありがとう』って(笑)
外から見たら、ふざけているように映ったかもしれないですけど、そんな提案も素直に受け入れるんですよ」
その空気に何度も救われた、と青柳は言う。
山岸や岩崎ら苦楽をともにした仲間たちと戦った2023-24シーズン
「退団を伝えるのが心苦しかった」と明かす2人の存在
愛知学院大を卒業後、当時はV・チャレンジリーグ(いわゆる2部)の、まだ“埼玉”の地域名が入っていない頃の上尾メディックスに入団した。個人賞受賞に加え、チームの昇降格も、トップカテゴリーでの上位争いも経験した。そんな時間を青柳は「一緒に成長してきた、と感じますね」と表現する。そして、その道のりには2人の盟友の存在があった。
「もう10年間近く一緒にプレーしてきたのは、岩崎こよみさんと山岸あかねさんなので。その2人に退団することを伝えるのは心苦しかった…。埼玉上尾での記憶を思い出すと、その2人の顔がよぎるんですよ。
例えば監督から『速い攻撃をしろ』と指示があっても、こよみさんは『打点を生かせるように高い位置にトスを持っていくからね』って。監督に逆らってでも、私のやりたいことをやらせてくれて、結果を出すことで監督に『それでいこう』と言わせたり。
キラさん(山岸)は、どんな状況でも私がアタックの助走に入れるように、しっかりと間をつくって1本目を上げてくれました」
きたる新シーズンで青柳は新天地に身を移すことを決断した。ゆくゆくは対戦相手として、2人と戦うことは十分にありえる。
「これからは2人がいない環境に行く。それが正解かはわからないですけど、(チームコネクターの)原桂子さんに『この選択を正解にできるように頑張ったらいいんだよ』と言ってもらいました。
戻りたい、と思ってしまうかもしません。でも、こんなにいいチームを去ること自体が私の覚悟。頑張らないと!!」
ネットを挟んで、にらみ合う。倒すべき敵どうし、闘志を燃やす。でも、その熱はきっと、ほんのり温かい。
気心知れたチームメートたちに別れを告げて、新たな挑戦へ
(文/坂口功将 写真/山岡邦彦、中川和泉〔NBP〕、月刊バレーボール編集部)
■230試合出場記念インタビュー 青柳京古(埼玉上尾メディックス)
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