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視線はオリンピックの先へ 男子日本代表B 渡邉晃瑠&大宅真樹インタビュー

岩手で6月に行われたドイツとの親善試合や、味の素NTC(東京)での練習試合(対エジプト)を終えて、7月13日(土)から17日(水)までは堤川(韓国)での招待試合に臨む男子日本代表Bチーム。韓国へと発つ直前、薩摩川内市(鹿児島)での合宿で聞いた、メンバーの声をお届けする(前編)

 

 

“コール”と呼ばれれば気さくに答える渡邉

 

 

「兄に追いつきたくて」渡邉晃瑠

 

――今季、日本代表に初選出。今の状況をどう感じていますか?

 とてもいい経験です! まず、日本のトップ選手たちと競い合えている。毎日彼らと対峙して、ひたすら練習に励むために来ていますから。来日1年目にしてこんな素晴らしい経験ができていること、ここに参加できていることに感謝しています。

 

――クラブチームと代表チームでの違いは?

 違いはありますよ。ここにいるのは全員、名簿の最初から最後までハイレベルで戦える選手です。(所属している)日鉄堺BZには、試合の中で成長している段階の選手もいます。もちろん、ここにいる選手もまた試合を通して成長しているわけですが、より高いレベルにあることは確かですね。

 

――代表チームでのプレーを楽しんでいますか?

 楽しいですよ。合宿では食費がかからないから、堺にいるときより安くすむ。その点は特にハッピーですね(笑)

 

――兄の飛勇さんはバスケットボールで日本代表入り

 すごいよね。私は兄に追いつきたくて、ここまできたんです。できると思っていなかったけど、今こうしてここにいる。兄はより高いレベル、A代表で頑張っています。そこに入ってオリンピックでプレーするのは、私も目指すところです。兄は今年、オリンピック出場まで射程圏内に来ました。16名のメンバーに入って、いよいよ最終12名のメンバーが発表される。兄には夢をかなえて、パリオリンピックの日本代表になってほしいと願っています。そして私もその場所に追いつけるよう、チャレンジしていきたいですね(その後、飛勇さんはオリンピックメンバーに選出された)。

 

――飛勇さんも元々バレーボールをしていたんですよね?

 そう、「高校」までは。アメリカではバレーボールよりバスケットボールのほうが大学の奨学金などを得やすいため、彼はより多くの機会を求めてバスケットボールを選びました。私はバレーボールを続けています!

 

――晃瑠さんはバレーボールを愛している、と

 そうだね! バレーボールを愛しているし、バスケットボールも好きだよ。ただ、高校のときに“ビッグマン”としてプレーすることを期待されて、そのポジションでプレーすることには慣れなかったんだよね。だからもうバスケットボールはしたくない、ってところかな。

 

――兄弟でオリンピアンを目指せますね

 まったく驚くべきことだよ。兄が実現するなんて思っていなかった。ずっと頑張ってきて、もうすぐかないそうだし、もしかしたら2度のオリンピアンになることも夢じゃない。できることなら、私も一度は出たいね。2028年、2032年…、次はロサンゼルスか。うん、楽しみだ!

 

――今後の目標を教えてください

 この代表チームにおいては、韓国での招待試合で勝利すること、そしてバレーボールを学ぶということ。日鉄堺BZでは、昨季の6位より上位にいくこと。勝って、優勝したい。もし達成できなくても、リーグで上位3チームには入って、メダルを獲得したいです。

 

――新戦力も加入します

 我々は強い。親友、13番の(シャロン・バーノン)エバンズが力を見せるよ。アルゼンチンから(ルチアーノ・)パロンスキー選手も加わるので、一緒に練習するのが楽しみです。素晴らしい選手が続々と海外から参戦してくる。新しく始まるSVリーグはそうあるべきだし、プレーするに値する素晴らしいリーグになるでしょう。私もプレーするのを楽しみにしています。

 

――チームでのコミュニケーションはますます重要になります

 そうだね、もう少し日本語を勉強しないと(笑) コミュニケーションは十分とれていても、もっと効率よくするために、リスニング同様にスピーキングもできたらと思う。だいたい理解できているけど、日本語を話すことの壁を乗り越えて、気まずさを感じないくらいに頑張ってみるよ。

 

――バレーボール選手として自分の強みはどう考えていますか?

 どうだろう。フィジカルが強みなのかな。みんなのようにボールコントロールに長けているわけではないから、体を鍛えて可能な限り強くして、日本人選手に対抗しないと。日本人選手はボールコントロールの天才だから!

 

――最後にファンの皆さんへメッセージをお願いします

 皆さん「応援、ありがとうございます」。いつも何と答えたらいいのか難しいけど、そうだな、試合を見にきてくださること、ファンの皆さんの「推し」選手である機会を与えてくれて、ほんとうに感謝しています。これからもコートでベストを尽くします!

 

わたなべ・こーる/日本製鉄堺ブレイザーズ所属

2000年4月6日生まれ

身長193cm/最高到達点345cm

イオラニスクール→ハワイ大

ミドルブロッカー

 

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キャプテンとして引っ張る大宅真樹

 

 

「人生を懸けて戦いたい」大宅真樹

 

――ネーションズリーグには異例の参戦でした

 振り返ると、体感15分くらい帯同した、という感じ。かなり短いなかだったので、できた、できない以前に、ああいう場でプレーできたことがうれしかった、というのが一つ。自分の出来は振り返っていないので、あの場を楽しんだというか、一人だけポッと入って浮いてしまってもおかしくないところで、いかに試合中になじんでいくかを考えながら、トスワークやコンビについてはあまり気にせずやっていました。

 

――代表でのプレー、という部分ではいかがでしたか?

 選んでもらう立場なので、どうしようもないこともたくさんある。いかにもらえたチャンスを自分の手でつかみにいくかだと思っていました。今回、そのチャンスを少しでも与えてもらったことに対して、やりきることはできた。結果的に選考にはかからなかったですけど、自分がやれること、この1シーズン、クラブチームでもそうですし、一試合に懸けた思いというものもすべて出しきったという手応えはあります。今はこのチームで、公式戦ではないけれども試合をできる場があるので、そこで結果を残すことにフォーカスできています。

 

――こちらではキャプテンも務めています

 前田(一誠)さんが入る前は、自分が最年長なので指名されたと思うんですけど。リーダーシップを持ってできる選手が集まっているので、ほとんど苦労もせず(笑) キャプテンとしては何もせずとも、いいチームになっているのかなと思います。このメンバーの中では、ある程度経験を積んでいるほうなので、自分の経験を練習のなかで伝えていくこともそうですし、同じ目線、方向を向いてやっていくことが大事だと思うので、ここにいる全員が韓国での招待試合をどうとらえているのか。一人一人のモチベーションはわからないですが、少しでも、コートの中だけでも気持ちを一つにしていく、というのが今、自分が求められているところでしょうか。この大会を甘く見るのではなく、今後の代表もそうですし、それぞれのバレー人生にとって絶対にいい経験になると思うので。私自身、人生を懸けてしっかりやりたいと思っています。

 

――昨季は世界クラブ選手権で3位となりました

 世界クラブ選手権はシーズン中だったので、そこでいったん気持ちが切れてしまう部分がチームとして出てしまったシーズンでした。そこからリーグ優勝するまでの気持ちの変化が、チームとしてどんどんよくなっていきました。世界クラブ選手権で満足してしまった自分たちから、もう一度日本で勝つために。もう一度世界の舞台に立つためには、日本で一番にならなきゃ出場権を取れない。そこをしっかり、もう一度目標に定めてやれたことが自分たちの成長だったと思います。世界で結果を出したあと、そこに満足したままリーグが続いてしまう、ズルズルと(悪いまま)いってしまう可能性もあった。そこで一人一人が目を覚まして切り替えられた結果、サンバーズとしてとてもいいシーズンになりました。

 

――いよいよ始まるSVリーグに向けてのお考えは?

 キャプテンは昨シーズンで終わりましたが、この4シーズン、キャプテンをしてきたことは確実に自分の財産になっています。引き続きチームを引っ張る気持ちを忘れずに動いていきたい。キャプテンではないからこそできることもたくさんあるので、そこに目を向けて頑張っていきます。シーズン前からビッグネームの移籍、参入がうわさされてきましたが、正式に発表されて現実のものとなった。チームもそういった選手に任せきるのではなく、今までの選手も大事にしてほしいというのは正直、感じているところです。髙橋藍選手、(アレクサンデル・)シリフカ選手、小野寺(太志)選手ら代表選手が注目されることはもちろん、今までサンバーズで頑張ってきた選手もそこにしっかり乗って、注目されるようなチームに進化できれば。今はクラブチームを離れて代表にいますが、運営側ともコミュニケーションをとって、いいチームにしていきたいですね。

 

――ではファンへのメッセージをお願いします

 昨季とはまた違うサンバーズになります。僕らを信じて応援していただけたらいいなと思いますし、また一緒にワンシーズン戦ってくれたらうれしいです。

 

――代表でのプレーを期待するファンもたくさんいらっしゃいます

 今まではクラブで結果を残して代表につなげる、という意識がものすごくありましたが、クラブと代表はまったく別物だとこの2年で感じました。どう結果を出しても、そのチームに必要とされなければ選ばれない。クラブでももちろんトップを目指してやりますし、代表でもコーチ陣が何を求めているのか? ということを考えながら、クラブでのプレーと結びつけていけたらと思います。今までの自分の考えはいったん帳消しして、シーズン中も代表のことを頭に入れながら、プレー面、メンタル面で成長していけたらと思います。

 

取材/泊 亜希子(後編に続く)

 

おおや・まさき/サントリーサンバーズ大阪所属

1995年4月23日生まれ

身長178cm/最高到達点328cm

大村工高(長崎)→東亜大

セッター

 

 

ゲーム練習の様子。積極的にコンビを仕掛ける

 

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