総再生回数は5000万回以上! ヒット動画を連発する東福岡高のInstagram 「インスタも日本一に」バレー未経験スタッフの情熱【高校バレー】
- 高校生
- 2024.07.30
強豪校を中心に、近年SNSで活動を発信する高校が増えている。なかでも、Instagramのフォロワー数は3.6万人(7月30日時点)を誇り、プレー動画が話題を集めているのが男子の東福岡高(福岡)。ヒット動画を連発し、コメント欄には海外からのコメントもある
東福岡高
昨年6月にアカウントを開設しフォロワーは3.6万人
アカウントを開設したのは、インターハイ県予選で13年ぶりに優勝を逃したが、その3週間後の九州大会で優勝した昨年6月。「全国大会に出られないなかでも、東福岡はまだまだここにあり」という藤元聡一監督の願いからスタートした。その運用を務めるのが、スタッフ2年目の田中理子先生だ。
総再生回数は5000万回以上。1投稿あたりの再生回数は740万回、530万回、333万回と、高校生チームのアカウントとは思えない数字が並ぶ。今季のチームの代名詞であるフェイクセットを絡めた得点シーンや、OBの永露元稀(大阪ブルテオン)との練習動画が人気。なかでも、中学、高校時代はソフトボールに熱中した田中先生らしさが光るのが、選手がGoProを着用してプレーする動画だ。「GoProの動画を見て、これをバレーでしたらおもしろいと思っていました。自分はバレーをしたことがないので、どんな目線なんだろうと思って。反響はすごかったです」。スピードあふれる東福岡のコンビバレーを、選手目線で感じられる。
投稿の内容は選手たちのユニフォーム姿だけではない。今年1月には、年末年始恒例のOBとの練習動画をアップ。藤元監督の華麗なトスワークや、OBたちとボールを追いかける姿がほほ笑ましい。熱く選手を鼓舞する試合中とのギャップに、指揮官への反響も大きいという。「(田中先生が)頑張ってくれているから、いじられてもいい」と優しく笑う。
東福岡高のInstagram
熱心な取り組みを藤元監督も高く評価
日本一を目指す選手たちと同じように、田中先生自身も追いかけた目標がある。中学2年生時からの夢は管理栄養士。高校3年生時にその講演を受けると、スポーツ栄養学への関心は高まった。そして、その思いをより強くしたのが、栄養士だった母との別れだった。
「お母さんが栄養士から管理栄養士になる勉強をしていたときに、がんで亡くなってしまって。かなえたかった夢を自分がかなえたら、天国で喜んでくれるかなと思いました」
大学では栄養科学部栄養科学科に進み、その夢に向かって突き進むはずだった。だが、「教員免許を取っていたほうが将来の幅が広がる」という助言で取り組んだ教育実習で人生は変わる。短期間で成長していく中学生の姿に喜びを感じ、「もっとやってみたい」と教師への憧れが芽生えた。「『男子校だけど大丈夫?』と家族から心配されました」と笑って振り返るが、2023年に東福岡高でキャリアをスタートさせた。
1年目は陸上競技部を担当。だが、小藤稔コーチが田中先生と同じ家庭科を教えていることもあり、当時からバレーボール部の選手たちとは関わりがあった。「ほんとうに礼儀正しくて、お手伝いもしてくれて。1年目から応援していました」。
バレーボール部担当になった2年目からは、チームのために力を尽くした。 「めちゃくちゃ勉強しました」と日ごろからバレーボールの動画をチェック。投稿にあたり、ハッシュタグは何がいいのか。プレーに合う曲は何か。「最初は怖かったですが、頼まれた仕事にこだわって取り組むと、『これを気づいてくれたんだ』と、すごく評価してもらえます」という藤元監督の存在もあり、試行錯誤も苦にならない。
藤元聡一監督
「今までも女性のスタッフはいましたが、ここまで頼んだことはなかった」と信頼を寄せる指揮官は、田中先生の取り組みを高く評価する。
「頼んだ作業を心を込めて全力でやってくれて、作業ではなく仕事として返してくれます。人間的なかわいさがあり、それが表現の端々に独特の表現として出ている。たまたま東福岡バレー部に配属された人が、バレー部のために頑張ってくれるのがものすごくうれしい。かけがえのない、代わりのいない存在で彼女も天才だと思います」
ヒット動画を連発しても、田中先生は「結果、そこにつながればうれしいですが、フォロワーや再生回数を増やすことにはこだわっていません。かっこいいプレーや、選手のオフな姿を見て喜んでくれる人がいたらうれしいな、というぐらいです」と語る。では、その原動力は何なのか。笑みを浮かべながら言った。
「生徒が日本一を目指しているから、インスタも日本一になりたいと思っています」
7月31日(水)に今季初の全国大会となるインターハイが開幕。頂点へ続く戦いの記録が、東福岡高の未来につながっていく。
2年ぶりの本戦出場で、夏の頂点を目指す
文・写真/田中風太(編集部)