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5連続サービスエースの衝撃よ、再び。日本男子 宮浦健人がフランスの地で剛腕をうならせる

 パリオリンピックのバレーボール競技を戦う男子日本代表は7月27日、プール戦の初戦でドイツと対戦した。フルセットの末に敗れたものの、セットカウント2-1で迎えた第4セット、27-27からサービスエースを奪ったのは背番号4、宮浦健人(ジェイテクトSTINGS)だった。

 

 

宮浦健人(みやうら・けんと/身長190㎝/最高到達点347㎝/鎮西高〔熊本〕→早稲田大→ジェイテクトSTINGS→ニサ〔ポーランド〕→パリ〔フランス〕→ジェイテクト)

 

 

パリオリンピック前の取材で口にした「頑張る」宣言

 

 ジュースにもつれ、一進一退の攻防が続くドイツ戦の第4セット。27-27の場面で宮浦の放ったサーブは相手コートのコーナーぎりぎりに着弾した。ふだんは物静かなたたずまいを見せる男が、雄たけびをあげる。勝利をぐっと引き寄せる一発。

 

 その姿に、およそ2週間前の本人との問答がよみがえった。

 7月10日に催されたパリオリンピック前の最後の取材の場。選手一人を記者がぐるりと囲む形式がとられ、宮浦も一つ一つていねいに答えていく。どの記者にとっても貴重な取材の機会であるため、なかなか質問をするタイミングが難しいものだが、めぐってきたチャンスに、いくつか聞きたかったことをぶつけ、最後に投げかけてみた。

 パリオリンピック本番もサービスエースを期待していいですか?

 その問いに宮浦は少し照れくさそうに、それでもはっきりと口にした。

「全然!! 頑張ります」

 

 

強烈なサーブで得点を奪う宮浦

 

年々増す、サーブを打つ際の勝負強さ

 

 形容するならば、剛腕。筋骨隆々とした肉体の、特に利き腕の左腕から繰り出されるサーブは豪快そのものだ。

 宮浦の強烈サーブは学生時代そして社会人になってからも猛威を振るってきた。そして2022/23シーズンに自身初の海外挑戦を決断し、ポーランド・プラスリーガのニサではオポジットの2番手で主な起用法がリリーフサーバーだったこともあり、サーブ一本一本にいっそう勝負強さが宿ったように感じる。

 

 例えば今年のネーションズリーグ予選ラウンドのアメリカ戦。セットカウント2-0で迎えた第3セット、21-19の場面から宮浦は3本連続サービスエースを決めて、勝負を決定づけている。

「攻める気持ちを常に持っているので。個人的にはあのように競り合った場面や終盤でのプレーには自信を持っています。(アメリカ戦の)あの場面は楽しみつつ、攻める気持ちで打っていました」

 

 24-19となり、マッチポイントに到達。自身のサーブ順は続く。このまま自分が決めてしまいたい、という欲はあったのだろうか。

「ほんと、決めようと思っていました。フィーリングもよかったので、いいサーブは打てたと思います。ですが、相手がキープしたので、しかたないなぁと」

 結果的にアメリカにサイドアウトを許したものの、宮浦のサーブに対する天井知らずの期待値が、さらに高まったシチュエーションだった。

 

 

ネーションズリーグのアメリカ戦では5本のサービスエースを含む18得点をマークした④宮浦

 

 

【次ページ】今年4月にフランスの地で披露した衝撃のパフォーマンス

パリオリンピックを戦う男子日本代表

 

 

今年4月にフランスの地で披露した衝撃のパフォーマンス

 

 さて、現在はパリの地で晴れ舞台を戦う宮浦だが、フランス・スパイクリーグでプレーした2023/24シーズンには衝撃のパフォーマンスを披露している。

 それが4月3日のプレーオフ準々決勝ラウンド第2戦で見せた、5連続サービスエースだ。なかなかトップレベルでは見られない数字であり、宮浦も「さすがに5本はないですね」と笑うほど。本人はこう振り返る。

「ショーモンとのプレーオフですね。第1戦はあらかじめ決められていたターゲットばかりを集中して狙いすぎて、自分らしいサーブを打ててなかったといいますか、サーブがあまり機能していなかったんです。

 そこで監督とも話して、自分は『好きなところに打っていい』となりました。自分の得意なコースやフィーリング、ターゲットに対して打つことにして、思いきり振り抜いた。それがあのときのサーブでした」

 

 

気迫を押し出してプレーする姿はクラブでも代表でも変わらない

 

パリオリンピックでも、得意コースへ“自分らしい”一撃を

 

「ほんとうに振りきって打っているなぁ、と思いました。波に乗ったら誰も(宮浦)健人さんを止められない。あれは衝撃的でしたね(笑) めったに見られないものですから」

 そう話すのは、甲斐優斗(専修大3年)。このときシーズン途中から宮浦と同じパリに加入しており、先輩の剛腕を直接、目にしたというわけだ。

 

 その言葉どおり、見るものに衝撃を与えた連続サービスエース。「自分の中で気持ちは上がっていましたが、うまく感情をコントロールでき、次のサーブにメンタルを整える準備をしていました」と宮浦は語る。今や代表活動でも見られる勝負強さは、そうしたマインドセットによってもたらされているのだ。

 宮浦が明かすに、自身の得意コースは「ゾーン1(バックライト)とソーン6(バックセンター)あたり」。そうか、フランスの地で再び宮浦は、自分の得意なコースに、自信の一撃を見舞ったのだ。それがドイツ戦の、あのサービスエースだった。

 

 おそらくこの先の戦いでも、エンドラインに立つ機会は宮浦に巡ってくるだろう。サービスエースを期待していいですか? そんな大勢の願いにきっと、応えてくれるに違いない。

 

 

大舞台で破壊力満点のパフォーマンスを多くのファンが待ち望んでいる

 

(文/坂口功将 写真/Volleyball World)

 

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