「地元に恩返しをしたい」と生前に約束していた元・男子日本代表の藤井さん
「心は一つプロジェクト バレーボール教室」が8月1日、石巻市総合体育館(宮城)で実施された。
このバレーボール教室は2023年3月に逝去した元・男子日本代表の藤井直伸さん(享年31)が生前、「東京2020オリンピックを終えたら石巻市で教室を開いて、地元に恩返しをしたい」と願っていたことから、その思いを実現すべく企画されたもの。藤井さんの母校である古川工高(宮城)のOB有志が実行委員会となり、所属先だった東レ静岡の阿部裕太監督、キャプテンの重藤トビアス赳、李博、小野寺瑛輝、真子康祐マネジャーが講師を務めた。
バレーボール教室の講師を務めた東レ静岡の面々
当日は地元の小中学生、計60名が参加。なかにはこれが初めてバレーボールに触れる機会となる子どもたちもいたが、李を筆頭にやさしくていねいに指導する様子が見られた。
社会人そして日本代表と長年、藤井さんとコンビを組んできた李は「藤井がやりたかった夢でしたから。これだけの皆さんの思いが集まったステージに、こうして携われたことを誇りに思いますし、とても刺激をもらいました」と感無量だった。
「(パリオリンピックには)間違いなく選手として参加していただろうな」と恩師の佐々木校長
教室の前夜7月31日には石巻市内で関係者による懇親会が行われ、高校生時代の藤井さんを指導した古川工高の佐々木隆義校長は「(藤井)直伸は今日パリに行っておりますので、この場に参加することはできないのですが、日本バレーの金メダルと東レアローズの新リーグ初代優勝を祈念して」と温かいユーモアをまじえて乾杯のあいさつ。ちょうど同時刻にはパリオリンピックのプール戦、日本vs.アルゼンチンが行われていた。
「実はバレーボール教室の開催ともう一つ、直伸と約束していたのが『パリオリンピックに行くこと』だったんです。そのときは、コーチとしてかな、と思っていたのですが、今の状況を見ると間違いなく選手として参加していただろうなと。この場面で直伸がいればな、と思うことがたくさんありますからね」と佐々木校長は惜しんだ。
そうして教室が行われた4日後、パリオリンピックの決勝トーナメント準々決勝で日本はイタリアと対戦。フルセットの激闘の末に敗れたものの、ベンチには藤井さんの写真が。パリの地で、日の丸をつけて戦う仲間たちの姿を見守っていたのである。
藤井さんが実現したかった景色がこの日、体育館に広がった
(取材・写真/坂口功将)
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