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「私はビーチを続けます」から8年 福田鈴菜が社会人で初タイトルに笑顔「もう一回、全国大会で優勝するために頑張っているので」

 中学生世代の4人制ビーチバレーボールの全国大会「湘南藤沢カップ ビーチバレージャパン4×4 U-15 第15回全日本4人制中学選手権」(以下、湘南藤沢カップ)が817日(土)、18日(日)に鵠沼海岸(神奈川)で開催される。昨今、学生たちの中でもビーチバレーボールへの興味関心が高まるなか、この大会で優勝したことを糧に今、社会人のビーチバレーボール選手としてプレーしている選手がいた。

 

 

福田鈴菜(ふくだ・すずな/2002年1月8日生まれ/横浜隼人高や〔神奈川〕→日本体大→湘南RIGASSOビーチバレーボールクラブ)

 

 

ジャパンツアーサテライト高萩大会で優勝した沢目/福田組

 

 今年84日に行われた「ジャパンビーチバレーボールツアー2024サテライト高萩大会」(茨城)を制した女子の沢目繭(ミライラボバイオサイエンス(株)/D.S.LINE(有))/福田鈴菜(湘南RIGASSOビーチバレーボールクラブ)組。ふだんは別々のペアで戦っているが、相方が参加できなかった福田から持ちかけて、このペアによる今大会への出場が実現した。沢目といえば、今年のジャパンツアーでは第1戦平塚大会で優勝を飾るなど国内シーンの第一線に立つ実力派選手。こちら社会人1年目、福田は「(沢目)繭さんは強打が素晴らしく、相手にすると嫌な選手(笑) 味方でよかったです」と印象を語り、続けて「ほんとうに頼りになる先輩だったので。私は自分のやることをしっかりやろうと考えていました」と振り返る。

 

 2日間のトーナメントで行われた今大会では失セット0。「大会の前日に初めて合わせました」(福田)が、終わってみれば相手チームを寄せつけない戦いぶりだった。そしてこの大会制覇は福田にとって、サテライトつまりジャパンツアーの下位カテゴリーとはいえ、自身の中学生以来となるタイトルだった。

 

 

 サテライト高萩大会の決勝を終えて、談笑する(左から)沢目/福田組

 

福田は2016年の湘南藤沢カップで日本一に

 

 さかのぼること8年。当時、西浜中(神奈川)の女子バレーボール部に所属していた福田は、2016年の湘南藤沢カップで優勝を飾っている。部活ではインドアに加えて、学校と国道134号線を挟んですぐの場所に茅ヶ崎漁港海岸公園が広がっていることから、週に3回ほどビーチバレーボールに取り組んでいた。

 そうして福田は3年生時に日本一に輝いたわけだが、実はその1年前も湘南藤沢カップに出場し、2日目の決勝トーナメントに進んでいた。しかし、悪天候のため中止に。その悔しさもあって喜びはひとしおだった。

 

 また、湘南藤沢カップは夏のインドアの選手権大会後に開催されるとあって、インドアで引退した後、もちろん出場するからには好成績を目指すわけだが、大会を3年生たちの集大成に位置づけるチームも少なくない。西浜中もその一つで、福田たち3年生6人のほか、下級生は1年生の2人のみ。江ノ島をバックに日本一の景色を見た福田は引退し、涙する下級生たちに「精いっぱい、声を出して頑張ってほしいです」とエールを贈っていた。

 と同時に、福田は決意を口にしている。「同級生たちには初心者もいたのでわからないですが…、私はビーチバレーボールを続けます」

 

 

西浜中3年生時に出場した湘南藤沢カップで、涙する後輩たちと一緒に(中央が福田)

 

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ビーチバレーボールでの日本一がその後、福田にとってモチベーションに。写真は西浜中の面々で記念撮影

 

 

「ビーチバレーボールという競技が大好きなんです」(福田)

 

 その後、福田は横浜隼人高(神奈川)でもインドアとビーチバレーボールの両立を図り、日本体大進学を機にプレーの場を本格的に砂浜へ絞る。だが、大会に出場すれど、優勝まではあと一歩が届かない。

「高校時代はマドンナカップ(全日本ビーチバレーボール高校女子選手権大会)で2年連続の準優勝でした。ほかの大会でも、いつも2位や3位ばかりだったんです」

 その分、思いは募るばかりだった。中学生のときに味わった、あの喜びをもう一度味わいたい、と。

「ほんとうにあの経験は生きていますね。もう一回、全国大会で優勝するために頑張っているので」

 

 福田自身、ビーチバレーボールは中学生になってからで、競技歴は10年に及ぶ。今春からは社会人そして、いちプレーヤーとしてキャリアを前進させた。そこではずっと変わらない思いを抱いている。

「ボールを多く触れるところがいちばん好きですね。ボールを追って、ペアが決めてくれたり、自分が得点できるとうれしさが込み上げてくる。目の前の1点を取るために作戦や声かけが変わってくるので、そんなところも含めて。ほんとうにビーチバレーボールという競技が大好きなんです」

 

 

ビーチバレーボール選手として活動する福田

 

これからビーチバレーボールに励む学生たちへ贈るエール

 

 サテライト高萩大会では実績ある沢目と組んだことで、「繭さんの声かけが勉強になりました。ペアどうしで気合いを入れるタイミングだったり、私が落ち込みそうになったときの励ましの言葉だったり。プレー以外で細かく、私を助けてくれました」と福田にとっては学びを得る機会となった。何より自身にとって実に中学生以来となるタイトル獲得に、「なんだかもう…、優勝っていいですね。みんなにおめでとうと言ってもらえましたし、繭さんと組んで優勝を目指して頑張ってきたので、ほんとうによかったです」と笑顔。キラリと白い歯がのぞく、その表情は8年前と変わらないままだった。

 

 今年もまた、ビーチバレーボールに励む中学生たちの熱い夏がやってくる。今はまだ、その魅力の虜になる前の選手だっているだろう。そして福田のように、ここでつかんだ成果がその後のキャリアを決めるきっかけになり、ずっと自分のモチベーションになることだってありえる。

 

 ビーチバレーボール界で待つ先輩が、湘南の戦いに繰り出す学生たちに贈る言葉。

「今回のサテライト高萩大会では高校生のペアとも試合をしたのですが、私が高校生の頃よりもレベルが高くて!! それに大会も学生たちがラインズマンをやってくれるなど、ビーチバレーボールに触れてくれました。環境があれば、みんなうまくなれると思うんです。なので、一本一本をあきらめずに、ビーチバレーボールをプレーしてほしいなと思いますね」

 

 

 沢目とのペアはひとまず今回のみ。学びを胸に、次の戦いへ

 

(文・写真/坂口功将)

 

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