gv-logo

春高2025

「焦って、泣いて」平野シアラが左足の手術から復帰 大きなピースが加わり金蘭会高が日本一【北部九州インターハイ2024】

  • 高校生
  • 2024.08.20

令和6年度全国高等学校総合体育大会バレーボール競技大会(インターハイ2024)女子は7月25日(木)から29日(月)までダイハツ九州アリーナ(大分県中津市)で行われ、金蘭会高(大阪)が2年ぶり3回目の頂点に輝いた。昨年11月に左足を手術した平野シアラ(3年)が今大会で復帰。アンダーエイジカテゴリー日本代表を7人擁するタレント集団に、頼もしい戦力が帰ってきた

 

 

優勝し、#11平野は涙を流して応援席に喜びを表現

 

 

3年生での復帰を目指して

昨年11月に手術を決断

 

 試合前にもかかわらず、平野の頭は真っ白になった。

「あ…、え?」

 

 いきなりの大一番となった予選グループ戦の東九州龍谷高(大分)戦。合同練習の最中に、池条義則監督からスタメン出場を告げられた。昨年10月の国体以来の全国大会。「前みたいなプレーができひんのはわかっていたから。今の自分ができることをやろう」。そう腹をくくれた裏には、乗り越えた苦しい半年間があった。

 

 現3年生が入学した2022年以降、池条監督がたびたび口にしたのは「ライト探し」。上村杏菜(現PFU)ら強力なエースはいたものの、オポジットのピースがなかなかハマらなかった。その問題に終止符を打ったのが平野だ。高さのあるブロックと強打で昨年からレギュラーに定着すると、国体では準優勝に貢献。だが、「結構痛かったです」と中学2年生時に前十字じん帯を断裂したことがある左足にダメージが蓄積していた。

 

 春高府予選を終えた昨年11月。検査をすると前十字じん帯の再断裂が判明した。それだけではなく、「じん帯の周りが全部ダメになっていた」と軟骨なども損傷。プレーを続けられる状態ではなかった。

「動けていたから大丈夫でしょと思っていたら、全然そうではなくて。これ以上バレーをすると、高校はやりきれたとしても一生バレーができない足になってしまうと言われました。春高に出たい気持ちもありましたが、自分たちの代に懸けようと思いました」

 

 

昨年11月、春高に向けて熱の入る練習を外れ、一人トレーニングに励む平野。その後手術を経て、つらいリハビリがスタートした

 

 11月下旬にメスを入れ、そこから4週間にわたる車椅子生活。歩くだけで足は震え、ひざははれた。「ほんまにバレーできるんかな」。復帰のメドは9ヵ月で、コートに立つ姿を思い描けない。金蘭会中(大阪)から切磋琢磨する仲間たちの活躍も、焦りに変わった。

「今まで一緒にコートの中で頑張ろうと言っていたのに、みんながうまくなっていて、ずっと焦っていました。焦って、泣いて、(青森にいる)親に電話して(笑) ほとんど毎日泣いている状態でした」

 

 だが、力をくれたのもその仲間たちだった。

「ずっと待っているよ」

「また一緒に日本一を獲ろう」

  手術前日に届いた同級生からのメッセージ動画が、折れそうになった心を支えてくれた。

 「みんなが待ってくれている。どれだけ遅くなってもいいから、コートに戻ろう、って」

 

 着実にステップを踏み、今年の5月上旬にはスパイク練習を再開。そして、7月上旬に実践練習に入った。今大会直前の合宿ではなかなか状態が上がらず、「ジャンプ力が落ちて今まで届いていたボールに届かなかったり、ブロックでしめるタイミングが悪くなっていて。でも、それはしかたがない。焦らずにゆっくりやろうと思います」と語ったが、戦いが始まると自身の想像を上回るパフォーマンスを見せた。

 

 

軟打を含め、幅広い攻撃パターンで得点を重ねた

 

途中出場の決勝は

アタック決定率100%

 

 予選グループ戦の東九州龍谷高戦では「思っているよりも決まったし、(ブロックで)止まった。今の自分では結構できたと思います」とストレート勝ちに貢献。準決勝での同校との再戦では4本のブロックを決め、何度も拳を突き上げた。そして就実(岡山)との決勝。連戦によるコンディションを考慮してベンチスタートだったが、2-0の第3セットからコートに立った。

「ヒザの状況を考えてくれていたのはわかっていたけど、やっぱり悔しくて。でも、(池条監督から)『乱れたときに使うぞ』と言ってもらったときに、信用してくれていると思いました。みんなが頑張ってくれたから、3セット目は自分が頑張るだけでした」

 

 優勝を決めるスパイクを含め、決定率は驚異の100%6打数)。「結構頑張りました(笑) 大会に入ってからジャンプ上がってきているのは感じていて、決勝でいいスパイクを打てたのはよかったです」と充実の汗をぬぐった。

 

 長いトンネルを抜け、開けた視界。平野にはかなえたい目標がある。

「まだ国スポ、春高と2つの全国大会が残っているから、そこでも日本一を取って。金蘭(会高)で今まで1回しかない三冠を成し遂げたいです」

 

 仲間たちへの恩返しは、この一度で終わらせない。

 

 

優勝し、3年生とともに写真に収まる平野(1列目右端)

 

平野シアラ

ひらの・しあら/3年/身長176㎝/最高到達点285㎝/金蘭会中(大阪)/オポジット

 

文・写真/田中風太(編集部)

 

発売中の月刊バレーボール9月号では、優勝した金蘭会高を含め北部九州インターハイの激闘の模様をレポート

ご購入はこちらから https://shop.nbp.ne.jp/shopbrand/m-volley/

 

 

■金蘭会が2年ぶりの優勝 女子最終順位と個人賞、全試合結果一覧【北部九州インターハイ2024】

■金蘭会が就実を下して2年ぶり3回目の栄冠【北部九州インターハイ2024】

■金蘭会 3回戦で下北沢成徳と激突も大森咲愛は「純粋にうれしい。ワクワクしています」【北部九州インターハイ】

■金蘭会高が大会初の10連覇 京都橘高は2大会連続の準優勝【高校生近畿大会(女子)】

■男子は昇陽、女子は金蘭会と大阪国際がインターハイ大阪代表に決定

  • マグダビッド×関田誠大
  • アシックス×高橋藍
  • 全中2024
  • 北部九州インターハイ2024
  • 男子日本代表応援サイト2024
  • 女子日本代表応援サイト2024
  • NBPオンラインショップ
  • 自社広告のご案内
  • 全国専門学校選手権2019

pagetopbtn