8月17日(土)からリマ(ペルー)で行われている2024女子U17世界選手権大会。その一員として戦うミドルブロッカーの溝上愛那(氷上高〔兵庫〕2年)はこの夏、大きな経験を積んでいる
2年連続の日の丸経験で
目標が変化
近畿大会では珍しい光景だった。フルセットの末に敗退が決まった準決勝(対京都橘高〔京都〕)直後の整列。悔しさをにじませる選手のなかで、溝上は泣いていた。7月下旬から行われるインターハイを10日後に控え、本番への最終調整の意味合いも強い大会。「勝ちたい気持ちが強かったし、最後に自分が決めきれなかった悔しさがあって」。一人、感情があふれた。
京都橘高戦ではジュースにもつれ込んだ第3セットであと一本が遠かったが、大会を通して高い決定力が光った。クイックだけでなくブロード攻撃、そしてライトからも強打を放つ。さらに、「決まらなくなったときにフェイントやプッシュで揺さぶりをかけたり、ブロックを利用して(コートの外に)出すことができた」。引き出しの多い攻撃には、日の丸を背負った経験が生きている。
北淡中(兵庫)3年生時に出場したJOC杯では優秀選手に選出。周囲の期待とは裏腹に、高校入学時に抱いた目標はそれほど大きくなかった。
「正直、自分は日本代表とかに入る選手だとは思ってなくて。とりあえず高校では全国大会に出て…、と思っていました」
だが、転機となったのが昨年7月。第1回アジア女子U16選手権大会のメンバーに選出された。全6試合中5試合でスタメン出場。決勝では身長180㎝超えのブロッカーが並ぶ中国を3-1で下した。
「こっち(高校)も楽しいですが、アンダーエイジ(カテゴリー日本代表)に行ってみると、いろんな世界があるなと思って。バレーボールって楽しいなと思いました」
目指すステージは変わり、「Vリーガーになりたい」と志は高くなった。「どんなときもいちばん動いて攻撃に入っていました。ブロックでは遅れても絶対跳びにいって、味方の守備を少しでも助ける行動をしていて。すごく憧れです」と荒木絵里香さん(元・日本代表)のような選手像を目指す。
その成長を間近で感じているのが氷上高の川釣修嗣監督だ。
「アジアを経験して、余裕を持って相手コートの空いているところが見られるようになってきています。これまでは(コートの)下に打ち込むことばかり頭にあったのが、奥に打つことも練習してきて。狙いがだいぶわかってきていると思います」
高いブロックへの経験値は上がり、氷上高に戻ってからもコートの奥を意識したスパイクを追求。メキメキと力をつける。
8月17日からは2024女子U17世界選手権大会に出場。予選ラウンドでは初戦から3試合連続でスタメン出場し、20日(火)のクロアチア戦ではチーム2位タイの13得点をマークした。「今のままだと能力が足りないし、精神面でも劣る部分が多い。個人としてもっと成長して、卒業したときに成長したな、と自分でも周りからも思われるような選手になれるように」と決意した近畿大会から1ヵ月。成長を続ける夏は終わらない。
溝上愛那
みぞかみ・あいな/身長177㎝/最高到達点297㎝/北淡中(兵庫)/ミドルブロッカー
文/田中風太(編集部)
写真/Volleyball World、AVC、編集部
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