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JT女子 宮部愛芽世が子どもたちへの指導で大切にしたこと。地元の交流会で「私自身、楽しかった記憶があるので…」

 SVリーグ女子のJTマーヴェラス(9月中旬から大阪マーヴェラスに改称)が814日(水)に兵庫県立文化体育館 常盤アリーナ(兵庫)で開催された「バレーボール交流会」に登場した。12名の選手が指導者となって計100名を超える小中学生を指導するなか、宮部愛芽世はかつての自分の姿を重ねていた。

 

宮部愛芽世(みやべ・あめぜ/身長173㎝/最高到達点303㎝/金蘭会高〔大阪〕→東海大→JTマーヴェラス/アウトサイドヒッター)

 

社会人1年目、JTでプレーする宮部

 

 この日、JTの選手たちは一人あたり、約56名の小中学生の指導にあたった。それぞれの輪で宮部はときに言葉巧みに、ときに実演をまじえながら、参加者たちにアドバイスを送っていた。

 

「ここがこうなっていると、こうなってしまうやろ? やから…」とていねいな説明もあれば、グループごとに座って設けられた質問タイムでは「あれやん!!」と関西弁のツッコミも飛ぶ。子どもたちとの会話を聞くかぎりは、うまく言語化できているようだが…。

 

「東海大でも中学生を相手に何度か指導する機会がありましたし、女子日本代表のイベントでバレーボール教室もありましたから。でも、それぐらいで、ほとんど経験はないんですよ。

 

 何度か回数を重ねるなかで、だいぶ慣れてきた部分はあります。とはいえ、自分が“これはできるだろう”と思っている範囲が相手によってはできなかったり、子どもたちがぶつけてくる大きな疑問に対して、もう少しうまく答えることができたら、子どもたちはもっともっとおもしろいのかなと思ったりも。そこは模索しながら、でした」

 

 そう言ったものの、クリニックの最中には、口元から白い歯がキラリ。実に楽しそうだった。

 

「私自身は楽しみながらできるほうだとは思っているので。子どもたちが『わからない』となっている状態から『できた!!』となったときに一緒に喜べるのが、とても楽しいですね」

 

 

この日の「バレーボール交流会」は兵庫県立文化体育館ファシリティ共同体とひょうごスポーツ応援部が主催したもの

 

JTが開くクリニックで、やんちゃをしていた!?

 

 実は宮部自身、JTが参加するこうしたクリニック(バレーボール教室)とは縁がある。兵庫県尼崎市出身であり、バレーボールを始めた小学生の頃に参加していたというのだ。

 

 2022年に日本代表に登録された際には元JTの竹下佳江さん(日本代表では監督付戦略アドバイザー)とのツーショットをSNSで披露し、そこでは幼少期を懐かしむ様子も。宮部自身が明かす、当時の記憶と真相はこうだ。

 

「その頃、JTでプレーしていた(元韓国代表エースのキム・)ヨンギョンが大好きだったんですよ。それでJTのクリニックでも、選手ごとにグループに分かれるんですけど、私は勝手にヨンギョンの元にいったりしていて(笑)

 

 それをテンさん(竹下)が覚えていらして、『すごくやんちゃだったから覚えているわぁ』と。テンさんと直接お話しした記憶は定かではないのですが、やんちゃだった私のことは覚えてくださっていたみたいです」

 

 小学生時代の宮部はJTのホームゲームに毎シーズン足を運び、エスコートキッズを務めた経験もある。やがて社会人となり、そのユニフォームを着ることになるとは不思議な巡り合わせだ。

 

イベントの最後には参加者たちへのサイン会も設けられた

 

【次ページ】自らの体験に倣って、今の活動に生かす

 

アクションをまじえながら、ていねいに説明する様子も

 

自らの体験に倣って、今の活動に生かす

 

「小さい頃のことは覚えていないですけどね!!」と宮部は笑う。けれども当時の体験が今、こうして自分が子どもたちを教える立場になって生きている実感はあるという。

 

「小さい頃の私は意欲的なほうだったと。それは、自分が『バレーボールっておもしろい』と思える回数が多かったからだと思うんですよね。その感覚があったから、こうしてバレーボール選手にもなれたのだと。

 

 なので、そういう気持ちを引き出すきっかけになれたらと考えています。強い、弱い、できる、できない、ではなくて。私が小さい頃、年に2、3度、JTのクリニックに参加させてもらって、すごく楽しかった記憶があるからこそ、子どもたちにもそう思ってほしいなという気持ちで常に取り組んでいます」

 

 こうしたクリニックの際、JTでは選手たちがメニューを考える。参加する子どもたちのレベルに合わせて、あらかじめ選手全員で話し合い、リハーサルをして、成功を目指す。今回の「バレーボール交流会」では競技経験の浅い子どもたちも多かったため、「バレーボールが楽しかった」「いい汗をかいた」と思ってもらうことを念頭に置いて、宮部たち選手は指導にあたっていた。

 

かつての自分が体験したように。子どもたちに“おもしろくて、楽しい”時間を提供しようと胸に留めている

 

「コートに立ってプレーする姿を見せたい」と宮部

 

 バレーボールっておもしろい――。

 

 そう体験してから10年以上、中高大とハイレベルなステージでプレーし、そうして今秋から始まるSVリーグに、宮部は一人のバレーボール選手として臨む。

 

「内定選手としてプレーした昨季と違って、フルでシーズンを戦うのが私自身は今回が初めてなので。まずは楽しみな気持ちもありますし、それにホームゲームの回数が増えますからね。

 

(母校である大阪の)金蘭会中高の後輩や、それこそ尼崎市の子どもたちに見てもらえる機会が今まで以上に増えるわけで、とても身が引き締まるといいますか。コートに立ってプレーする姿を見せたいと思いますし、チームとしては優勝を目指しているので、ホームの力を借りながら、いい結果を残したいです」

 

 今年、JTに入団してから尼崎市でのクリニックに参加した際には、宮部が司会を務めた。そこでは幼少期を知る関係者から「大きくなったね」「感慨深いね」という声を聞き、過ごしてきた年月とバレーボール選手としての自身の立場を実感した。

 

 こうしたバレーボール教室で宮部とパスをかわした子どもたちの中から、将来のバレーボール界を担う選手が出てくるかもしれない。おもしろい、楽しい。そんな感情がつなぐバトンが、そこにはある。

 

JTマーヴェラスから大阪マーヴェラスへ。チームの新たな船出とともに、活躍を誓う

 

(文・写真/坂口功将)

 

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