ミスをいかに乗り越えるか。全国大会で八条中男子の監督がリリーフサーバーへ示した理解「大人でも緊張するものですから」
- 中学生
- 2024.09.14
「支えてくれた親にも恩返しをしたかった」と腕を振り抜いた住田
務めを果たした姿に、チームメートたちの笑顔が弾けた
「第2セットもチャンスはあるかも、と思っていました。それに3年生なので、全国大会でサーブを打てるのも最後かもしれない。3年間の思いを発揮できるように意気込んで、緩いサーブでもコースを狙って打ちました」
そう気持ちを強くしてエンドラインに立った住田はそこから効果的なサーブを繰り出してみせた。チームもブレイクに成功し、果たして試合終了の瞬間をコート上で迎えることに。予選グループ戦通過の喜びはもちろんだが、チームメートたちはとびきりの笑顔を浮かべながら住田の元へ駆け寄った。
「みんなの顔を見ると、いつも以上の笑顔でいてくれたので、めちゃくちゃうれしかったです」
マッチポイントからアタックを決めた3年生ミドルブロッカーの青木奏人も「ナイスサーブを打ってくれたので。同級生が活躍したら、うれしいものですね!!」と明かしている。住田が第1セットで大失敗したのは周りもわかっていた。だからこそ、それを乗り越えた姿が誇らしかったのである。
出番へ準備する選手たちの緊張をほぐす千代監督
「得たことを抱きながら、大人になってくれれば」と千代監督
第2セットのゲーム中、八条中は住田たち控えのメンバーをベンチに座らせていた。時折、千代監督は彼らに話しかけ、太もものあたりをたたく。活を入れているように映った。
「とにかく緊張で足が震えていたので、『じっとせい!!』と笑いながら、ほぐしていました。それに私自身も、途中出場の難しさと向き合う彼らに何も声かけができていなかった反省があったので。選手たちが自分なりのプレーができるように、と考えていました」
指導者もまた、自身への反省を踏まえて、手を打っていた。と同時に、再度起用された場面で力を発揮した住田と、そこでの選手たちの強い思いに胸を熱くした。
「住田が1本目をしっかりと打ち込んで、さらにコート上では『なんとかもう1本打たせたい』という機運が高まっていましたよね。そうしてチーム全体にナイスプレーが生まれてよかったです」
最終的に八条中は翌日の決勝トーナメント一回戦で大森二中(東京)に敗れて、全中を戦い終えている。率いてきた学校でいずれも全中出場を果たしてきた千代監督はしみじみと語った。
「私たち指導者は部員たちとの巡り合わせがあれば、チャンスはやってくるでしょう。ですが、選手たちにとって全中は、おそらく一生に一度あるかないかの経験をさせてもらえる舞台ですから。
真剣に取り組んだこと、失敗したこと、それに私に叱られて悔しくて涙したことも、ね(笑) その一瞬で得たことを抱きながら、大人になって、『あれがあったから、どんなことにも向き合える』と思ってくれたら。そうやって成長できる場なのだと、今回も実感しました」
一本のサーブミスと、2本のサーブ。数えるほどの体験であっても、きっとそれは本人の中でこれからも生かされる。
この夏もかけがえのないシーンがプレーの数だけ見られた
(文・写真/坂口功将)
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