7月下旬からダイハツ九州アリーナ(大分県中津市)などで行われ、駿台学園高(東京)の優勝で幕を閉じたバレーボール男子のインターハイ。準々決勝では、昨年度の国体、春高に続いて同校と高川学園高(山口)のマッチアップが実現した。10月6日(日)から佐賀県で行われる国スポで、4大会連続の対決はなるか
我慢比べを制し
駿台学園高がストレート勝ち
勝者も敗者も泣いていた。インターハイを制した駿台学園高と、国体日本一の高川学園高が激突した昨年度の春高3回戦。その3ヵ月前に行われた国体では、山口県として臨んだ高川学園高が、準々決勝で駿台学園高中心の東京都を下して頂点へ。そのリベンジを期した夏の王者が逆転勝ちすると、コートにはまるで決勝後のような光景が広がった。
練習試合でも切磋琢磨したライバル。涙ながらに健闘をたたえ合うなかで、両校の2年生はある約束をしていた。
「来年もやろうな」(三宅綜大〔駿台学園高〕)
「もちろん。次は負けんよ」(岩本純弥〔高川学園高〕)
駿台学園高は春高連覇を果たし、それから半年が経った。昨年度の高校バレー界をリードした両雄が、インターハイ準々決勝で三たび激突。ともにキャプテンマークをつけたセッターの三宅とミドルブロッカーの岩本は、笑顔で握手を交わした。岩本は言う。
「正直に言って、逆の山(ゾーン)にいきたかったんですけど(笑) 『当たって砕けろ』ではありませんが、全部ぶつけようと思いました」
これまで名勝負を生んできた大きな要素が、高校屈指のディフェンス力。駿台学園高は昨年度から大型化したものの、今試合も両チームのカラーは変わらなかった。一つのミスも許されない緊迫感に包まれながら試合は進む。13-10と先に高川学園高が13点の給水タイムにたどり着いた。だが、直後にタイムアウトを取ると、徐々に駿台学園高が主導権を握る。岩本はその変化を感じていた。
「序盤に比べて駿台(学園高)の対応力が違ったというか。ミスした攻撃に冷静に対応してきて、なおかつ守備の安定感が全然違いました。自分たちがいけないボールに駿台は追いつけて、つなぎの精度の差が目立ったと思いました」
駿台学園高は12-14からアウトサイドヒッター櫻井信人がこの日2本目のサービスエースを決めるなどじわじわ点差を詰めると、ミドルブロッカー敷浪孝一のブロックで18-17と前に出た。20-19ではリベロの谷本悦司が抜群の反応で何度もボールをつなぎ、最後は櫻井がレフトからストレートに一閃。このプレーで勢いに乗り第1セットを奪うと、第2セットは一度もブレイクを許さず。ストレート勝ちで駿台学園高に軍配が上がった。
昨年度よりサイズは劣るため、ディフェンスに力を入れてきた高川学園高のお株を奪うような堅守。同校の有吉健二監督は、改めてライバルの強さを感じた。
「今年(の高川学園高)は高さがないぶん、リスクをとって攻めることも必要だと話してきました。ただ、試合ではレシーブで頑張るけど、ブロックが崩壊して取りきれない部分がありました。サーブのレベルを上げて、あと何回かラリーで点を取れる機会があれば、おもしろい展開になったと思います。ですが、それをなかなかつくりきれなかったところがやはり、駿台(学園高)さんの強さだと思います」
2月の全日本ジュニアオールスタードリームマッチでは同じチームで戦った三宅と岩本は、互いのすごさを口にした。
「高川(学園高)はうちみたいなチームで、フロアディフェンス、ブロックディフェンスがいい。簡単に決められない場面が多かったですが、ラリーで取りきれたのがよかったです。(岩本)純弥は春高に比べてブロックが粘り強いというか。前にいるローテーションはサイドアウトを取るのがめんどくさかった印象があります」(三宅)
「以前、試合をした際はボコボコにやられて(5月の練習試合では1セット限定で戦い、10-25の惨敗)、それをふまえたうえでのゲームでした。とにかく(三宅)綜大はトスのテンポが早く、それに右往左往する展開が多くて。挙げ句の果てにはブロックチェンジもされつつ、高さで圧倒されました」(岩本)
これで直近の対戦成績は駿台学園高の2勝1敗に。ひりつくゲームを制した前年度王者は、その後インターハイ連覇を成し遂げた。次の対戦のチャンスは駿台学園高の梅川大介監督が「もう嫌ですね(笑) 去年負けたトラウマではないですが、それを払拭しきれていない感じがします」と語る国スポ。岩本は「学ぶべきことはたくさん学んだので、次は自分たちらしさを爆発させて、国スポでは勝ってリベンジをしたいです」と目を輝かせると、三宅は「当たらないように、ですね。もう決勝以外は大丈夫です」と笑った。
その願いが届いたのか。抽選の結果、昨年度の国体以降で初めて逆のゾーンに入った。ともに勝ち上がれば決勝で対戦。東京都選抜として臨む駿台学園高の今季全国2つ目のタイトルか、それとも山口県代表として戦う高川学園高の連覇か。実現すれば、これまでにない舞台が待っている。
文/田中風太(編集部)
写真/山岡邦彦(NBP)、編集部
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