中央奥が中田選手。参加者たちと
デフスポーツとつながった防災教育
大きな災害時にはどういった対応が必要となるのか? を学ぶ防災教育において、実際に周囲と協力しながら体を動かして体験するプログラムが各地で行われているが、今回はそこに「耳が聞こえない人にはどういったサポートが大事なのか」という視点が加えられた。10月6日に都内で行われたイベントに参加したのは、耳が聞こえないろう者を含む小学生22人で、デフバレーボール女子日本代表の中田美緒選手がゲストとして、子どもたちとともにプログラムに取り組んだ。
デフ(Deaf)とは英語で「耳がきこえない」という意味。そんなアスリートのためのオリンピック、デフリンピックが2025年11月に東京で開催される。バレーボールなど全21競技が行われ、7~80ヵ国からおよそ3,000人の選手たちの参加が見込まれている。中田選手は過去2度のデフリンピックに参加。セッターとして、2017年のサムスン(トルコ)大会では金メダルに輝いている。
この日の防災スポーツ体験では次の4つのプログラムが実施された。
・キャタピラエスケープ(火災時の煙の中など、姿勢を低くして動く速さを競う)
・レスキュータイムアタック(災害時でも入手しやすい毛布を担架代わりに使って負傷者を安全に速く運ぶ障害物レース)
・キャットサイクルレース(小回りが利き、悪路にも強い一輪車を使う障害物レース)
・ゴー! ゴー! キャリー(災害時、大量に届いた救援物資を限られたスペースに整理・収納する物資搬送リレー)
4つのグループに分かれた子どもたちは、声を使わずにお互い自己紹介。半数はろう者だったにもかかわらず、聴者も含めてほんの数分で打ち解けたあとは、お手本として中田選手が実演したそれぞれのプログラムに取り組んだ。ルールはやはり「声を使わないこと」だったが、優れたコミュニケーション力を発揮した子どもたちは笑顔で協力し合い、次々と課題をクリアしていった。
聞こえない人とも積極的なコミュニケーションを
体験プログラムを終えた子どもたちからは「いろいろなことが勉強できた」「ほかの防災体験と違って、声を出さずに手話などを使うのが楽しかった」といった声が挙がった。
中田選手は「デフリンピックを知ってもらうとともに、防災について学ぶとてもいい機会でした。聞こえる人たちは、手話がわからなくても、ほかの方法が使えることを理解してもらったうえで、さまざまなところで(ろう者と)コミュニケーションする機会を増やしてほしいと思います。そしてたとえば困った人がいたらすぐに助けるなど、今後に生かしてほしい」と振り返り、来年11月15日に迫った東京2025デフリンピックに向けて「たくさんの人に、音のない世界に気づいてもらえる機会になったら」と呼びかけていた。
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