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パナソニックにまつわるもう一つの名称変更。9人制女子のジュニアチーム「門真BluebellsFjr」のFに込められた地域との共創

 バレーボールのSVリーグを戦う男子の大阪ブルテオンは昨季まで「パナソニックパンサーズ」として活動していた。これまで以上に地域に根ざして活動するというチームの意志表示が今回のリブランディングだったわけだが、同じくパナソニック系列のチームであり女子9人制の強豪「パナソニックブルーベルズ」もまた、昨年末にジュニアチーム「門真BluebellsFjr」を発足。その背景には地域との共創があった。

 

門真BluebellsFjr

 

9人制バレーボール女子の強豪「パナソニックブルーベルズ」のジュニアチーム

 

 9人制バレーボールの国内トップリーグ「第10V9チャンプリーグ」で大会10連覇の金字塔を打ち立てたパナソニックブルーベルズ(以下、ブルーベルズ)。チームはパナソニックグループが工場を構える守口市(大阪)の体育館を活用している。

 

 そのジュニアチーム(中学生世代)の「門真BluebellsFjr」が昨年12月に発足し、各地の交流大会でその姿が見られた。名称にある門真とは守口市に隣接する門真市を指し、Bluebellsはまさに“姉貴分”にあたるシニアチームが由来だ。

 

 そこで気になったのがFの一文字である。

 

 実はこれ、門真市を拠点に17年もの間、活動してきた小中学生世代のクラブチーム「門真フェローズ」の頭文字からとった“F”なのである。ブルーベルズが今回、地域連携の一環としてジュニアチームを立ち上げるに際して、門真フェローズが完全な下部組織として生まれ変わったというわけだ。

 

ユニフォームのいたるところに、ブルーベルズのロゴマークが入っている

 

「門真フェローズ」から「門真BluebellsFjr」へ

 

「ブルーベルズ・エフ・ジュニア、呼びづらいといえばそうかもしれませんね」

 

 長年、門真フェローズで指導にあたり、この門真BluebellsFjrでも監督を務める中山浩一氏はそう言ってほほえんだ。と同時に、新名称について胸の内をこう明かした。

 

Jリーグの横浜F・マリノス(※)みたいに、ね。門真フェローズとしての17年に及ぶ歴史をムダにさせないための一文字でもあるのかなと。チームを運営していくなかで厳しい時期もありましたし、そうした経緯を経て、新しいチームに受け継いでいく。だからこそ、“F”の文字は大事にしたいと思うんです」

 

 その背景を聞くに、門真市側からもブルーベルズに対して、そうした意向を持ちかけたのだという。近年、門真市内のバレーボール競技人口は減少しており、地域としても小中学生を対象にした競技普及活動には力を入れたかった部分。そこでブルーベルズと連携することになったわけだが、全国大会にも出場するなど精力的に活動してきた門真フェローズも、門真市としてはやはり大事にしたい。新たにチームを作るのではなく、地域を代表してきたクラブがいるからこそ、双方が手を取り合い一緒に活動・発展していくことに舵を切る。

 

 中山氏も傘下に入ることを歓迎し、そこで「フェローズの一文字だけでも残してもらえないか?」と打診したところ、ブルーベルズ側も「喜んで。入れてください」と快諾。そうして門真BluebellsFjrの誕生に至った。

 

(※)サッカーのJリーグで横浜フリューゲルスの廃部に伴い、同じく横浜を拠点にしていた横浜マリノスがチームを吸収合併。名称が横浜F・マリノスとなった。

 

門真フェローズ時代からチームを指導する中山監督(左)

 

パナソニックブルーベルズの現役選手たちと関わる機会も

 

応援する保護者たちのウェアも統一され、コートとの一体感を生む

 

パナソニックブルーベルズの現役選手たちと関わる機会も

 

 チーム発足に際して、門真フェローズも“リブランディング”を遂げた。新チーム名のとおり、青色と黄色を基調としたユニフォームに様変わりし(以前は白がベース)、また黄色がアクセントカラーとして映える。さらに観客席で応援する保護者たちのウェアやグッズも統一された。これには中山監督も「選手やスタッフに加えて、保護者たちが一体となって試合を楽しめる。チームを応援してもらえるムードがつくれていると感じます」と喜ぶ。

 

 何よりの特徴は、やはりジュニアチームという体制から、トップチームの選手たちと直接交流を図れることにある。実際に同じ体育館で練習する際には、ポジションごとに選手がつきっきりで指導する機会が実現するそう。

 

「毎回の練習が勉強になっています。一回一回、“こういうところができていないから、こうすればいいよ”と教えてくださるので、課題を攻略できています」と語るは門真BluebellsFjrの蒔田有衣菜キャプテン(梶中〔大阪〕3年)。学んでいるのはスキル面だけでなく、コート上でのムードづくりも。「特にブルーベルズのキャプテンは場の盛り上げ方がほんとうに上手なんです」と蒔田キャプテンはどこか誇らしげだ。

 

 確かに、門真BluebellsFjrの選手たちはどんなシチュエーションでも明るい。門真フェローズ時代から見られた特徴でもあったが、さらに磨きがかかったようにも映る。チームの主力でアウトサイドヒッターの髙尾日織(大正東中〔大阪〕3年)は「チームがミスしたときの声かけや一本一本の切り替え方が、ブルーベルズの方々と私たちではまるで違うと感じます。自分自身もミスを減らして、さらにチームの雰囲気を自分からよくしていけるような選手になりたい」と“姉貴分”の背中を、自らの目標に重ねた。

 

「盛り上げることとプレーで全員を引っ張っていける選手になりたい」と①蒔田

 

次の世代のバレーボール選手たちへバトンをつなぐ。その役割を兼ねながら

 

 ブルーベルズと門真BluebellsFjrとのつながりは練習だけに留まらず、中学生たちが9人制の大会やイベントに協力したり、逆にチームのOGがスタッフとして中学カテゴリーの大会に帯同する機会もある。「運営面でも身軽になりました。私もそろそろ後任を探そうかな」とおどける中山監督も、連携に伴う変化をこう語る。

 

「ブルーベルズには金蘭会高(大阪)や東九州龍谷高(大分)といった名だたる高校出身の選手がいますし、『私の高校時代はこうだった』と中学生たちに伝えてくれます。それに、以前は私も含めて男性2人がコーチとして指導していましたが、女性スタッフも加わったことで選手たちもさらに活動しやすくなったと感じています」

 

 門真フェローズの創設から17年。とはいえ中山監督自身は事業を営んでおり、それはバレーボールチームの運営とはまったく別。あくまでもボランティアで、10年以上も地元の中学生たちの指導に携わってきた。今回、体制が変わり、その先に見る景色とは――。

 

「私はボランティアですが、結局はバレーボールが好きだから今に至るんですよね。こうして子どもたちを育てて、成長して選手として活躍してもらい、ゆくゆくはチームに帰ってきてボールを出したりしながら、さらに次の世代を指導してくれる、そんな人材を育てたいなと思うんです」

 

門真BluebellsFjrとなりベンチには女性スタッフの姿も

 

「ありがたいことにチームに入団してくれる子どもたちの住むエリアは門真市だけでなく、どんどん広がっています。昔は地元の子たちが自転車で練習場所まで来ていたものですが、最近は車での送迎も増えました。

 

 それは門真市のバレーボール人気の低迷を表してもいるわけですが、ブルーベルズの佐々木厚監督が先陣をきってバレーボール教室やママさんバレーのイベントを催すことで、どんどん競技普及を図っているところです。そうした機会を増やしていきたいと考えていますし、その一環として私たちのチームの活動があればうれしいです」

 

 ブルーベルズの由来は、実在する青色の花「ブルーベル」に“勝利の蒼い鐘を届ける者たち”という意味が込められている。そこに加わったFの文字。門真フェローズの頭文字であるのはもちろん、きっとこれは地域の“未来=FUTURE”へ響く鐘の音なのだろう。門真BluebellsFjrの選手たちの笑顔を見ると、そう思わずにはいられない。

 

この中から、この先のステージで活躍し、やがて指導者としてチームに戻ってくる選手がいるかも

 

(文・写真/坂口功将)

 

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