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SVリーグでなくても。サンガイアの熱血漢 梅本鈴太郎が仕事とバレーボールの両立で抱いた新たな感覚「競技から離れる時間があるからこそ、深く考えられる」

アイキャッチ【写真:坂口功将】

 バレーボールの世界最高峰のリーグを目標に掲げて注目を集める「2024-25 大同生命SVリーグ」と並行して、いわゆる下位カテゴリーにあたる「Vリーグ」も10月に開幕し、男女ともにレギュラーシーズンの真っただ中にある。男子のつくばユナイテッドSun GAIA1116日、17日に今季初のホームゲームを実施。そこで活躍がキラリと光ったのが、日本製鉄堺ブレイザーズ(SVリーグ)から移籍加入したミドルブロッカーの梅本鈴太郎だ。

 

 

梅本鈴太郎(うめもと・りんたろう/身長193㎝/最高到達点343㎝/鎮西学院高〔長崎〕→中央大→日本製鉄堺ブレイザーズ→つくばユナイテッドSun GAIA/ミドルブロッカー)

 

週末のホームゲーム2試合で計9本のブロックシャットを決めた梅本

 

 富士通カワサキレッドスピリッツを迎えた霞ヶ浦総合体育会館(茨城)でのホームゲーム。16日の初戦で梅本はチーム最多5本のブロックポイントをあげて、フルセット勝ちに貢献した。その翌日は敗れたものの、松林哲平の5本に続いて4本のブロックポイントをマークする。6試合27セットを戦い終えて梅本は、1セットあたりのブロック決定本数こそアイシンティルマーレ碧南の水野将司に1位を譲っているが、計26本のブロック得点はリーグトップ。ほぼ1セットに1本、決めている計算になる。

 

 富士通戦に限って言えば、「セッターの小野宙選手とは高校時代からよく対戦しているので、わかりやすいといいますか」と本人。そのうえで、「チームのシステムとして動いたゆえのブロックシャットなので、僕だけの得点ではないと思っています」と謙虚な姿勢を崩さない。

 

 それでも、決めどころが実にいい。息を呑む長時間のラリーになったときこそ、梅本は最後に叩き落とすようなキルブロックをさく裂させるのだ。架谷也斗キャプテンも「高さがありますし、抑えてほしいところを押さえてくれるのでとても頼もしいです」と太鼓判。続けて「やっぱり得点したあとのパフォーマンスで雰囲気を盛り上げてくれるのが非常にありがたいです」と加えた。

 

 

富士通戦では相手セッター小野とネット越しの駆け引きに興じた

 

中央大を卒業後、日鉄堺BZに入団も出番をつかめず

 

 これでもかと言わんばかりに口を大きく広げて吠えに吠える。まるで火山が噴火したかのような感情表現。鎮西学院高(長崎)でエースを務めた学生時代から、常にコート上で見られた梅本の代名詞である。

 

 だが、そんな姿が試合を通して見られるのも久しかった。中央大を卒業後、当時DIVISION11部)の日鉄堺BZに入団したものの、そこではなかなか出場機会を得ることができなかった。

「学生のころは点を取ることが仕事で、それだけをやっていればいいという考えも少なからずありました。ですが、いざVリーグの世界に入ると、それだけでは生きていくことは難しかった。一つ一つのプレーを理論立てて、その内容を深く理解していないとスタートラインに立てないと痛感しました」とは今年の春、日鉄堺BZの退団を発表してから明かした思いである。

 

 内定時代を含めて4シーズンを過ごし、日鉄堺BZでの通算得点は29、そのうちブロックポイントは8という数字を見れば、今、梅本がまるで違う立場にいることが想像できる。本人も言う。

「これまで、それほど自分のプレーをいろんな方々に見せることができていませんでした。それが今はこうしてお見せできる立場になったので、もっともっと自分のプレーを発揮して、やりたいことをやって、お客さんを沸かせたいなと思います」

 

 

キャプテンを務めた鎮西学院高時代からガッツあふれる選手だった

 

【次ページ】「環境が変わってよかった」とほほえむ理由

「想像していた以上に、サンガイアのメンバーはポテンシャルも意識も高くて、とても自分のためにもなると感じました」と梅本

 

「環境が変わってよかった」とほほえむ理由

 

 もっとも、違いでいえば、それはコート上だけではない。日鉄堺BZに在籍したときは契約の形態上、プロ選手の立場だった。だが今は競技とは別で、地元企業に勤める一人のサラリーマンなのだ。

 

 梅本自身、日鉄堺BZ時代には「学生とのいちばんの違いは、お金をもらってバレーボールをすること。自分で自分に責任を負う点にプレッシャーを感じていました」と向き合っていた。そこではトレーニングから自主練習までバレーボール漬けの日々を送ることができていたわけだが、一転して今は生活を支えるために仕事に励み、それが終わればサンガイアの活動に移る。いわば“仕事とバレーボールの両立”を自分の手で図らなければならない。そこに対して梅本は「新鮮ですよ。仕事をすること自体の経験がなかったですから」とほほえむ。

 

「以前のようにバレーボールだけを考えていればいいわけではない。かといって、生活や仕事のことに重きを置けば、今度はバレーボールがおろそかになってしまう。

 でも、競技からいったん離れる、仕事という時間があるからこそ、さらにバレーボールのことを深く考えられるようになった感覚があるんです。そこが僕自身、環境が変わってよかったと思う点ですね」

 

 聞くに、従事しているのは中古車の販売店。「たまに、車の窓を磨きながら、『昨日の試合はこうだったなぁ』なんて思いにふけることもあります。そうしたら『きちんと拭けていないぞ!!』って怒られて、『あ、やばい!!』なんて(笑)」と冗談まじりに仕事の様子を話す梅本はどこか楽しげだ。

 

 

梅本へ「得点はもちろん、声かけなどでチームの雰囲気を上げてくれるところに期待しています」と架谷キャプテン(左)

 

「勝ちにこだわる姿勢は変えていない」とさらなる活躍を誓う

 

 DIVISION1という国内最上位カテゴリーでは己の実力不足という壁にぶちあたり、その現実に悩み続けた。ただ、苦しい思い出ばかりかと言われれば、そうではない。梅本は自身のデビュー戦をはっきりと覚えている。

「サントリーサンバーズ戦(当時)でドミトリー・ムセルスキー選手をブロックしたのが初得点だったんです。その日はうれしくて、友人たちにめちゃくちゃ自慢しましたもん(笑) 初得点は感動ものでしたね」

 

 以降は出番機会をつかめずとも、試合ではチームの勝利をいちばんに考え、ムードメーカーとして声を張り上げることをいとわなかった。それは今にも通ずる。

「勝ちにこだわる姿勢は以前からも、つくばユナイテッドSun GAIAにきてからも変えていません。これからも突き詰めて、ポイントを取るためにいろんなことにどんどんトライしていきたいです」

 

 国内トップレベルのステージで決めた“8分の1”本のブロックシャットの記憶は色濃く残る。すでにそのとき以上の数のブロックを決めており、この先も今いるステージで数を重ねていくだろう。その一本一本にも思いは詰まっている。そして決めるたびに、梅本鈴太郎は吠えるのだ。

 

 

闘志全開、感情をむき出しにしてこれからもプレーし続ける

 

(文・写真/坂口功将)

 

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【ギャラリー】春高の長崎県予選決勝を戦った当時の梅本鈴太郎

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