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春高2025

秋本美空(共栄学園高)が最後の春高へ「彼女の3年間がすべて出る」 【共栄学園高 中村文哉監督インタビュー】

  • 高校生
  • 2025.01.01

第77回全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高)が1月5日(日)に東京体育館(東京都渋谷区)で開幕する。共栄学園高(東京)の中村文哉監督のインタビューをお届け。フルセットの激戦を制し、都第3代表の切符をつかんだ春高都代表決定戦で得られたもの、そして2年生時に日本代表に選ばれ、いよいよ最後の戦いを迎える秋本美空キャプテンへの思いを語った

 

 

中村文哉監督(共栄学園)

 

 

春高都代表決定戦で

大きな収穫

 

——現3年生が1年生のとき、中村監督は「(メンバーが)そろっている」と言っていました。この3年間を振り返ると、成長はいかがでしょうか?

 技術的な底上げはもちろんできていると思いますが、気持ちの部分では育ちきれていません。そこが育っていたら(今年度の)インターハイも絶対に出ているし、そこは悔いが残るといえば残りますね。もちろん全員がそうではありませんが、キーマンに限って弱気だったり、自分で自分を追い込めないところはあります。

 

 彼女たちの中では成長している感覚はあると思いますが、共栄(学園高)の監督としては物足りないところはたくさんあります。昔のようにこちらから無理矢理やらせるのではなく、自分たちでどう追い込むかが大事になってきて。そういうところでは「もっとやれよ」と(感じる)、まだ甘いところはあります。

——3年生中心のチームですが、お互いに要求し合えていない部分もあるのでしょうか?

 彼女たちなりにやっているとは思いますが、歴代の選手を見るとまだ足りません。そんな中で、木村響稀はちゃんと追い込みますね。自分に厳しく、他人にも厳しく、取り組み方が素晴らしい。だからこそ(春高東京都代表決定戦で)レギュラーに抜擢しました。彼女をコートに入れたことでチームが安心しました。

——その春高都代表決定戦では文京学院大女高との3位決定戦を2-1で制し、本戦出場を決めました。試合後の中村監督の涙にはどんな意味が込められていましたか?

 とにかくよかった、って(笑) でもぶっちゃけ、中身が育っていないので、予選が始まる前から「負けるんだろうな」と思っていました。だから、準決勝で成徳(下北沢成徳高)にあれだけ善戦したのは(1-2で敗戦)いい意味での誤算でした。文京(文京学院大女高)戦でああいった試合になるのは重々承知で。絶対にサクッと勝たせてくれないし、負けるかもしれない、という思いはほんとうにありました。

山下裕子(共栄学園/左から3番目)

 

 

——ただ、競った試合で勝ちきれたことは大きな経験になったと思います  

 そこはプラスですよね。いかんせん、1年生の山下(裕子)にとって自信がつきました。初スタメンだったので、ギャンブルみたいなものでしたが、ほんとうに入れてよかったと思います。いちばん大事な試合でいきなり出したので、あれだけ活躍できたのはうれしい誤算でした。

 

——34-32で奪った第2セットは、得点を決めて涙を流しながらプレーしていました

 あれでいいんです、彼女は。ほんとうにあんなに決まるとは思わなくて、よく頑張りましたね。

 

 やっぱりああいう子(身長は183㎝)を育てていかないといけません。3年生でメンバーを固めるのはもちろん考えましたが、ほんとうに夏に頑張って、すごくよくなってきていたので。その結果があの舞台での活躍につながったのかなと思います。

 

日本の将来を見据えた

秋本への指導

 

——2年前の中村監督の言葉を振り返ると、秋本選手について「どうにか日本のために」「オールマイティーで寿命の長い選手に」と言っていました。3年間見てきて、その成長はいかがでしょうか?

 まだまだ教えることはありますが、世界に通用するような打ち方や考え方はお腹いっぱい教えたつもりです。ただ、いい意味でサボり方もうまい選手。あれだけずば抜けているので、本気を出さなくても決まっちゃうんですよね。

 

 でも、今回の春高予選は頑張りました。久々に本気を出したな、という感じでしたね。

 

#1秋本美空(共栄学園高)

 

                                       

——1年生時はトスを上げたり、将来のためにさまざまなプレーに取り組んでいました

 何かの取材でも言いましたが、セッターとしての素質もあって、最初はセッターとして育てようと思っていました。中学3年生から高校1年生のときは結構やらせましたね。トスを上げるシーンもあったので、今も二段トスはキレイに上げます。

 

 ただ、よくよく考えて、日本代表の試合を見ていても、あれだけ大きいパスヒッターはあまりいません。古賀紗理那選手(元NEC)の引退報道もありましたし、 ああいうポジションが急務だと思いました。1年生のころはほんとうに細かったですが、3年生になって力強いスパイクも打てるようになってきたと思います。体の使い方が上手になりました。

——特にどんなことを伝えてきましたか?
 攻撃ではなくて、まずはレシーブができないとダメだよ、ということですね。あとは、高校のカテゴリーが終わったあとに、全部(ブロックの)上から打てるわけではないので、打ち方を教えました。

 

——2年生時からはサーブレシーブにも力を入れていました

 最初は全然ダメでしたが、今は確実にうまくなっています。やればやるほど絶対よくなるので、もっともっとうまくなる印象です。

——当初は「お任せ」と言っていたキャプテンを経験し、チームを引っ張る自覚も出てきた印象です

 うーん、半分半分ですかね。でも、なんだかんだキャプテンにして正解だったかな、と思います。姉御肌で、チームを引っ張ったり、後輩の面倒を見ることもできるので。3年生がそれではダメだろ、というところもありますが、キャプテンになってからは少なくなりました。

 

練習で仲間に声をかける秋本

 

#1秋本美空(共栄学園高)

 

——来年からはさらに上のステージに進みますが、これからどう育ってほしいですか?
 日本を引っ張らなきゃダメ。そういう意味でもキャプテンにしましたし、ほんとうにそう思います。

 

——いよいよ3年生にとって最後の春高が始まります。東九州龍谷高(大分)が第4シードで、古川学園高(宮城)らがいるゾーンに入りました。どんな大会にしたいですか?

 この代は3度目の正直(1年生時はベスト82年生時は1回戦敗退)。調子がよければ優勝できる強さはあると思います。あとは3年生がどうするか…。秋本さんしだいですね。やっぱり頑張ったね、になるのか、それともダメだったになるか。彼女の3年間がすべて出ると思います。

 

文/田中風太(編集部)

写真/山岡邦彦(NBP)、編集部

 

 

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