下北沢成徳高「身長180㎝トリオ」の中田藍美 アキレス腱断裂の大ケガを乗り越え今季最初で最後の全国大会へ
- 高校生
- 2025.01.05
第77回全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高)が1月5日(日)に東京体育館(東京都渋谷区)で開幕した。昨年度2度の日本一、そして前回の春高で準優勝した下北沢成徳高(東京)は、ミドルブロッカーの中田藍美が左足アキレス腱断裂の大ケガからカムバック。メダルラッシュの昨年度から一転、試練が続いた1年を笑顔で締めくくれるか
昨年11月の春高都代表決定戦で、ベンチから仲間を鼓舞する中田(右)
「できることをする」
応援団長に名乗り
下北沢成徳高にとって、2024年度は勝負の1年になる。はずだった。
23年度はリベロの内澤明未(東京女体大1年)以外のレギュラーは2年生で、インターハイと国体で優勝。春高は決勝で就実高(岡山)に敗れたとはいえ、3大大会すべてで日本一を懸けた戦いを経験した。新チームになっても、エースのイェーモンミャに加え、河俣心海、中田藍美、柳千嘉の身長180㎝トリオらも健在。3月のさくらVOLLEY(全国私立高等学校選手権大会)では頂点に輝いた。
だが、春先からその不動の布陣が崩れていく。4月、レシーブ練習時に中田が左足のアキレス腱を断裂。悲劇は続き、5月にはエースの一角を担う後藤ビビアン愛音が右ひざの前十字靭帯断裂で離脱した。中田にとっては1年生時にレギュラーをつかんでから初めてのベンチ外に。だが、毅然と振る舞った。
「親には『できることするしかないから、どう貢献するかを考えなさい』と言われて。自分が今までユニフォーム着て試合をできていたのは、サポートしてもらっていたからなので」
インターハイ都予選ベスト4リーグでは応援団長に名乗り出た。スタンドから声を張り上げ、同じミドルブロッカーの柳が「ブロックのときに、(中田)藍美の声がめっちゃ届いていました」と語るように選手たちを鼓舞。2位で本戦の出場権をつかんだ。
昨年6月のインターハイ都予選では、スタンドから声をからした
それでも、本戦の3回戦では優勝した金蘭会高(大阪)にフルセットの末に敗戦。インターハイ都予選で第2代表となったことで国スポに出られず、残す全国大会は春高のみとなった。
相棒・柳千嘉の成長が
リハビリ中の刺激に
中田が抜けたことでサウスポーの久米未唯奈が、後藤の離脱で2年生の荻野明花が力をつけた。戦力を底上げするなかで、中田が「いちばん変わったと思う」と語るのが対角を組んでいた柳だ。
北沢中(東京)時代から同じポジションで高め合ってきた2人。どちらからといえば中田がブロック、柳はスパイクを得意としていたが、相棒の離脱に柳は覚悟を決めた。
「藍美のブロックがチームでいちばんきれいで高くて、自分も少しでもできるように、藍美のブロックを見て頑張ろうと思っていました。藍美がケガをする前まではブロックで(中田に)頼っていて、自分はスパイクで点を取りたいタイプでしたが、自分もブロック、スパイクともに頑張らないと、と思うようになりました」
春高都代表決定戦では、イェーモンに匹敵する得点力を見せ、ブロックでも貢献。ミドルブロッカーとしてその要を担い、準決勝(対共栄学園高)ではチームで17本のブロックを決めた。決勝ではインターハイ都予選で敗れた八王子実践高を2-1で下し、1位で本戦の出場権を手にした。
コートには立てなかったものの、ベンチの最前列で鼓舞し続けた中田は、「今までの(柳)千嘉は『自分が、自分が』というタイプではありませんでしたが、『自分が決める』と口に出すようになりました。無意識だと思いますが、そういうひと言を聞くと全然違うんだな、と思います」と相棒の成長に刺激を受ける。
ベンチで言葉をかわす中田(左端)と柳(中央)
仲間たちの頑張りに勇気をもらい、オレンジコートでの復帰を目指してきた。半年以上に及ぶリハビリを乗り越え、昨年11月上旬から練習に参加。横への移動が多いブロックとは違い、アキレス腱に負担がかかるスパイクは、不安がないとは言いきれない。本戦を1ヵ月後とした昨年12月、「状態としては大丈夫ですが、正直にいえばトラウマもあります」と胸の内を明かしていた。しかし、強い眼差しで言葉を続けた。
「それを1ヵ月で克服して、1月に合わせて出られる状態にします。伊藤先生(崇博監督)が使いたいと思うことを目標にしています。
6ヵ月間プレーしていなくて、今まで何年もやってきたことでも1ヵ月で戻すのは多分難しい。そうなると、自分の強みだと言いたいブロックをいちばん練習して、そこにフォーカスしないといけません。ブロックでもっと貢献できるようになりたいです」
今季2度あった全国大会決勝は同じカード。インターハイは金蘭会高、そして国スポは岡山県の単独チームとして出場した就実高がともにストレート勝ちで制した。好スパイカーぞろいの両女王を破るべく、中田が鉄壁の壁として立ちはだかる。
昨年度の春高以来の全国大会へ
中田藍美
なかだ・あいみ/3年/身長185㎝/最高到達点307㎝/北沢中(東京)/ミドルブロッカー/クインシーズ刈谷内定
文/田中風太(編集部)
写真/山岡邦彦(NBP)、山田壮司、編集部
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