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JOC杯神奈川県選抜男子がキャプテンに初めて地域クラブの選手を抜擢。「この子しかいない」と青木謙典監督が即決した、一つの質問への答えとは

  • 中学生
  • 2025.01.24

 バレーボールの中学生世代にとってその年いちばんの舞台となる「JOCジュニアオリンピックカップ全国都道府県対抗中学大会」(JOC杯)の第38回大会が昨年12月に大阪で開催された。その中でも快進撃ともいえる戦いぶりでベスト8入りを果たしたのは、男子の神奈川県選抜。敗れた準々決勝で最後にアタックを打ったのは、県選抜としては初となる、地域クラブ在籍でキャプテンに任命された鈴木悠(浜岳中3年)だった。

 

 

①鈴木悠(すずき・はるか/浜岳中〔神奈川〕,藤沢クラブ 3年/身長178㎝/最高到達点307㎝/アウトサイドヒッター)

 

 

22回大会以来となる準々決勝進出を果たした神奈川県選抜男子

 

 感情を爆発させながらコートを駆け回る姿はときに荒々しく映り、それでいて試合前後の整列ではすがすがしいほどに大きな声を張り上げる。今大会の神奈川県選抜男子はそうしたムードを対戦相手にぶつけた。予選グループ戦では長身エースを擁する富山県選抜に競り勝つと、決勝トーナメントでは一回戦で大分県選抜、二回戦で福岡県選抜と例年チーム力の高さに定評ある九州勢を撃破し、3位の成績をあげた第22回大会(2008年)以来となるベスト8進出を果たした。今大会で初めて県選抜の指揮を執ることになった青木謙典監督(富士見中)は言う。

 

「チームとしては大会本番で東京都選抜と戦いたかったのですが、それができなかったのは悔しいところです。ただ、誰もが神奈川県選抜が勝ち上がってくるとは思っていなかったはず。ダークホースだったでしょう?(笑)

 決勝トーナメントは『九州大会かな?』と思える対戦相手との連続でしたが、それもまたおもしろかったですね。優勝はもちろんでしたが、ベスト8を目標に取り組んできたので、誇らしいです」

 

 チームを好成績へ導いた青木監督に、聞いてみたかったことを投げかけてみる。キャプテンの人選について、だった。

 

 

今年度のJOC杯神奈川県選抜を指揮した青木監督

 

 

選考にあたって選手たちに投げかけた一つの質問

 

 名門校がひしめく東京都を筆頭に、全国のなかでもとりわけ激戦区の関東ブロック。関東大会を突破すること自体のハードルが高いわけだが、それでも神奈川県は武相中や早渕中、西中原中、向丘中などが全国大会出場の実績を持ち、今回の県選抜でもそうした学校から選出されたメンバーが名前を連ねた。

 

 そんななか、地域クラブの「藤沢クラブ」で活動する鈴木悠がキャプテンを務めることに。県選抜としては初のケースであり、それは異色に映った。その抜擢にあった理由を、青木監督は目を輝かせながら、こう明かした。

「総勢270名から県選抜のメンバーを選考したわけですが、面談の最後に必ず一つの質問をしていたんです。それは『初めてバレーボールをやる子に、競技の楽しさを教えるなら何を伝えますか?』というもの。たいていはスパイクやレシーブと答えるんですけどね。

 鈴木だけは『自分は小学生からバレーボールを始めて、サーブが全然入らなくて、初めて入ったときの喜びが忘れられないんです。だから、その子にサーブを教えてあげて一緒にゲームをやるんです』とにこにこ笑いながら答えました。その回答と表情を見て、キャプテンはこの子しかいない、と決めました」

 

 実のところ青木監督は、この質問に関して自分なりの答えを持っていたそう。それにマッチする選手をキャプテンにしようと考えていたが…。

「私が思うに、バレーボールのいちばんおもしろいのは、負けているときに“みんなで1点を決めること”だと考えていました。そのワクワク感が競技の楽しさそのものだと。

 でも、そうではない視点からの回答に、僕もうれしくなってしまって。ほんとうにバレーボールが好きな少年なんだな、と感じて、迷わず彼にしたんですよ」

 

 

九州勢との連戦となった決勝トーナメントを戦い抜く神奈川県選抜

 

 

【次ページ】コンビバレーの土台となったチームワークにおいて光った存在感

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