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春高2025

JOC杯神奈川県選抜男子がキャプテンに初めて地域クラブの選手を抜擢。「この子しかいない」と青木謙典監督が即決した、一つの質問への答えとは

  • 中学生
  • 2025.01.24

 

チームとしても元気のよさはピカイチだった

 

 

コンビバレーの土台となったチームワークにおいて光った存在感

 

 青木監督が話すに地域クラブとの接点はほとんどなかったというが、「ビーチバレーボールなどで全国大会に出ているクラブということは存じ上げていました。とはいえチームでも彼はキャプテンではない。でも彼がキャプテンだったら、県選抜でもにこにこしながら取り組んでくれるだろうなと想像していました」と明かす。

 

 そのうえでの抜擢は、当の本人にとって驚き以外のなにものでもなかった。鈴木は振り返る。

「自分はキャリアもなくて、最初は県選抜に選ばれることもないだろうなと思っていました。ですが、青木先生がキャプテンに選んでくれて、絶対に勝つんだという思いで活動に臨みました」

 

 チームづくりにおいて生かされたのは、コミュニケーション力の高さだ。地域クラブ自体、異なる学校から集まったメンバーで活動する。それは県選抜と似ており、鈴木は「全員に話しかけること」を意識し、そうしたキャプテンの姿勢がしだいに抜群のチーム力につながった。これには青木監督も「とにかく仲がよかったですね。練習でペアを組むときも、いつも組み合わせを変えよう、とか。部屋割りも『今日は誰々でいく?』なんていつも言っていましたから」とほほえむ。

 

 そのチームの中で鈴木自身はレシーブに徹する役目に回った。藤沢クラブではエースなのに、だ。

「藤沢クラブでは自分しか打つ選手がいなかったので、“俺がチームを勝たせるんだ”という思いでした。ですが、県選抜ではみんなが打って、ブロックされても拾い上げて、得点につなげることを体験しました。それにサーブレシーブから全員でコンビを繰り出すのがおもしろかったです」

 

 

キャプテンとしての務めをまっとうした

 

 

「鈴木で終わったなら、それでいい」とチームメートたちの声

 

 チーム自体は、実に30にも及ぶサインから繰り出すコンビバレーを武器とした。メンバー交代を積極的に行い、ローテーションによって“ヒーローが変わる”ことは選手たちにとっても意欲をかきたてられた。

 

 そうして臨んだJOC杯は最後、準々決勝で熊本県選抜に敗れる結果に。ただ第1セットは29-31と競り合いを演じ、第2セットも22-25とくらいついてみせた。その試合最後にアタックを打ったのは鈴木だった。

「選手たちから『はるか(鈴木)で終わったなら、それでいい』という言葉がありました。第2セットのあの場面、私もベンチからセッターと目を合わせたら『はるかですよね?』とサインを出してきたんです。あとは『全員でおとりに入るんだ』と私からは伝えて、ライトの鈴木にトスが上がりました。決まらなかったですけれど、チームの戦い方としては完璧だったと思います」(青木監督)

 

 得点とはならず、試合終了のホイッスルとともに鈴木はその場に突っ伏した。「全然ダメなキャプテンだった」と鈴木は自身を戒め、決めきれなかったことを悔やむ。

 けれども、県選抜活動の最後に上がったそのトスは、鈴木がこのチームのキャプテンだったことの何よりの証しであると同時に――。

「藤沢クラブで中学3年になって、自分しか打つ選手がいないことが逆につらくて、バレーボールをやめようと思ったときもあったんです。それでも続けたらいいことがあるから、と。今はやめなくてよかったなと感じます。キャプテンの経験もこの県選抜が自分にとって初めてで不安もありましたが、どんどんみんながチームとしてまとまっていくのが楽しかったです」

 

 監督を驚かせた、バレーボールへの向き合い方から始まった鈴木のJOC杯は、彼だからこそ得られた達成感とともに幕を閉じたのであった。

 

 

仲間たちと一緒に“エムバペ・ポーズ”で得点シーンを喜ぶ姿も

 

 

(文・写真/坂口功将)

 

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