谷本悦司を「世代No.1リベロ」に押し上げた2人の存在 春高の悔しさは筑波大で【駿台学園高全国三冠メンバー、次の舞台へ】
- 大学生
- 2025.04.11
1月の春高で3連覇&全国三冠を成し遂げた駿台学園高(東京)。最優秀選手賞に輝いた川野琢磨(早稲田大1年)をはじめ、スタメンの3年生はこの春新たな道に進んだ。2年連続で春高のベストリベロ賞に輝いた谷本悦司(筑波大1年)には、守護神として成長させてくれた2人がいた
谷本悦司(駿台学園高3年生時)
レシーブの基礎を築いた
「セナくん」の取り組み
3年前の春。駿台学園高の門をくぐった谷本悦司は、リベロとして歩み始めたばかりだった。2年連続春高ベストリベロ賞、そして全国高校選抜に選出。レギュラーになった2年間では6度の全国大会で5度のタイトルを手にした。「世代No.1」の呼び声は高いが、そのポジション歴は決して長くなかった。
初めて守護神としてプレーしたのが大森二中(東京)3年生時のJOC杯。サウスポーから放つスパイクを武器に全中にも出場したが、「スパイカーをしたい気持ちはありましたが、この先のことを考えたらスパイカーは厳しい」と新たな道を選んだ。「もともと得意で、自信がありました」というレシーブ力を生かして同大会で優勝し、ベストリベロ賞に選出。駿台学園高入学後も守護神としてプレーしたが、当初から前向きに取り組めていたわけではなかった。
「最初はあまりリベロをやりたくなくて。中学までずっとスパイカーだったし、スパイカーのほうが魅力的というか。そっちをやりたい思いが強かったです」
1年生時はレギュラーとして出場できないなかで、その魅力に気づかせてくれた2人がいた。まずは練習やトレーニングでパートナーを務めることが多く、「セナくん」と慕う亀岡聖成(筑波大2年)だ。
「細かいプレーの質がほんとうに高くて、安定感があったので。そこはめっちゃ見習っていました」
その理由を紐解いていくと、亀岡の強靭な下半身に目がついた。「足の踏ん張りがすごくて、レシーブのかたちが崩れない。それも安定する一つの要因なのかなと思いました」。レギュラーに定着した2年生時。1学年上の選手たちの打球に圧倒されると、トレーニングへの熱がさらに高まった。
「先輩たちの打球がほんとうに速くて、重くて。しっかりトレーニングを頑張らないとそういう打球に押されることが多かったので、2年生からだいぶ意識が変わりました」
駿台学園高では、ともに鉄壁の守りをつくり上げた亀岡(左)と谷本
入学時は90㎏ほどだったスクワットの数値は、3年生時には160㎏をマーク。「セナくんみたいながっしりした足にはならなくて…。もっともっと頑張らないといけなんですけど」と苦笑いを浮かべたが、パワー自慢の櫻井信人に次ぐ数値をたたき出した。同年の春高では、ベストリベロ賞に輝く守りでチームを連覇に導いた。
リベロの先輩から学んだ
守護神としての心得
そしてもう一人、「リベロの魅力に気づかせてくれた」というのが現在はコーチで、駿台学園高3年生だった2016年度には、リベロとしてチームを全国三冠に導いた土岐大陽だ。亀岡ら当時の3年生が抜け、スタメンとして試合に出場していた者が少なくなるなか、求められたのがコート上でのリーダーシップ。周囲への声かけだった。
「プレーのことは気にしなくてもできているから、とずっと伝えてもらえて。そこは自信にしていました。でも、指示の声や鼓舞する声の大切さは(土岐)大陽さんからずっと言われました。最初はどういう声かけをすればいいのか全然わからなくて、リベロがそういう役割だとわかっていなかったです。でも、アドバイスなどで、少しは変われたかなと思います」
卒業式にて、土岐コーチ(右)と記念撮影
新チーム結成当初や、今年の春高直前などキャプテン交代の危機もあったが、キャプテンが代わることも多い駿台学園高で、1年間その役割をまっとう。「最後はなにもしていない」と謙遜したが、プレーでも、リーダーシップでも大きな役割を果たした。
願い続けた全国三冠を成し遂げた一方で、悔いも残った。
「大会を通してチームとしてはいい出来で終われたと思いますが、個人的にはあまりベストなパフォーマンスを出せなかった。この悔しさをバネに、大学ではまた頑張っていきたいです」
その続きは、「セナくん」と再びタッグを組む筑波大で。守護神としてたくまくなった顔つきで、新たな一歩を踏み出した。
たにもと・えつし
筑波大1年/身長171㎝/最高到達点317㎝/大森二中→駿台学園高(ともに東京)/リベロ
文/田中風太(編集部)
写真/魚住貴弘、編集部
試合日程
2025年度春季関東大学バレーボールリーグ戦 第1日
4月12日(土)@小田原アリーナ
Dコート第1試合 日本体大—筑波大
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