駿台学園高の新監督は髙橋藍、水町泰杜らと同世代の23歳 高橋真輝新監督「SVリーグや日本代表で活躍できる選手を」
- 高校生
- 2025.04.18
令和6年度第30回全国私立高等学校男女バレーボール選手権大会(さくらバレー)は3月25日〜28日に町田市立総合体育館(東京)ほかで行われた。梅川大介監督がSVリーグ大阪ブルテオンのアカデミーダイレクターに就任することが発表された駿台学園高(東京)は、高橋真輝監督が初めて指揮を執った
梅川前監督(左)と高橋新監督
2024年度から
母校のコーチに就任
入学前の中学3年生も出場することができるさくらバレーで、デビューを飾ったのは選手だけではなかった。サイドラインに立ったのは、梅川監督に代わって指揮を執る高橋真輝新監督。2024年度は春高3連覇、全国三冠を成し遂げたといえど、そのスタメンのメンバーは全員卒業していた。選手たちと同じく、新監督も慣れないことの連続だった。
「監督をしたことがないので、何を指示すればいいのか全然分からないままでした。選手も去年、試合を経験していない子たちばかりなので、すごく緊張していて。試合慣れは大事なんだと思いました」
24年度から母校である駿台学園高のコーチを務め、そこからわずか1年で監督へ。指導者の道を切り開いてくれたのは、恩師の存在が大きかった。同高3年生時には、伊藤吏玖(東京GB)、染野輝(サントリー)らとともに春高で準優勝。ただ、レギュラーではなかったため、「高校でバレーは結構きついな、と思って。大学はそんなに厳しいところではなくていいかな」と考えていたが、受験でうまくいかず。結果的に進学先を日本大に決めた際に、湧き上がった思いがあった。
「改めて自分はバレーが好きなんだな、と思って。今後、ずっとバレーに携わっていきたいと感じました」
2019年度の春高で、準優勝した駿台学園高の選手たち(高橋新監督は2列目右から2番目)
そこから3年近く経った大学3年生時の年の瀬。母校に練習に行くと、恩師である梅川監督から聞かれた。「就職はどうするの?」。男女問わず、Vリーグ(当時)チームで指導がしたい、と考えていたタイミング。練習に参加していたチームもあったが、「そこがダメだったら駿台に来てくれない?」と誘いを受けた。「先生はいろいろなつながりがあるので、自分の幅も広がると思いました」と昨春から母校で指導者として歩み始めた。
幸いにも、コーチ1年目でいきなり3度の日本一を経験。「バレーのことをすごく知っている。人間観察の能力がすごくて、高校生のときは嫌いでした」と笑う恩師のすごさを、あらためて感じた。
「駿台は選手が集まっていると言われがちで、確かにそうかもしれません。でも、先生(梅川監督)はその選手たちの力を引き出す能力がほんとうに高い。自分には考えられない発想や、引き出しをすごく持っています。駿台の選手たちは誰がどこに入っても同じプレーができると言われますが、先生がそういった環境をつくっているんだと思います」
例えば、昨年度のチームの代名詞となったバックアタック。助走の入り方は、パリオリンピックでイタリア代表が見せたプレーを参考にした。「『イタリアのパイプ、いいよな』『うちでもまねできる』と話していて。先生自身も上のカテゴリーのプレーを見たり、アップデートしていて、それがこれまでの高校生では考えられないようなプレーにつながったと思います」と強さの一端を知った。
コーチとして携わった2024年度は、春高3連覇を達成
刺激をくれる
同世代の選手たち
1年間で戦術面の意見は何度も交わしてきた。だからこそ、高橋の心に違和感が残る会話があった。今年の春高が終わって初めての練習試合。ふだんのようにプレーについて話すなかで、梅川監督の言葉に引っかかった。
「来年はこういうことをやらせたほうがいいよ」
「いいよね」ではなく「いいよ」。自身の高校時代から梅川監督が辞める、という話を耳にしたこともあっただけに、「いや、待てよ。なんかおかしいぞ、と(笑) 先生、辞めるのかな? って」。その予想が的中したのは2月に入ってから。2人きりの車中で、梅川監督の退任と、高橋の監督就任を告げられた。
「ついにきたな、って。まだ2、3年やるかなと思っていましたが、やっぱりか、と思いました(笑)」
高橋と同じく、選手たちにも動揺はあったものの、監督退任を告げられた翌日からは「やるのは自分たちだから」と気持ちも切り替わっていたという。セッターの堀内晴翔キャプテンは言う。
「周りからは梅川先生がいるから強い、と見られることも多いです。確かにすごいですが、去年の3年生を見ていても、1年間を通して自分たちで厳しくやっていました。今年もそうやって自分たちで考えてやっていけば、そんなに変わることはないと思います。ゲームをするのは、やっぱり自分たちなので」
高橋新監督も「結局やるのは生徒自身。生徒がやっていることをどうサポートしていくか」とうなずきながらも、「挑戦していきたい」と力強く言う。昨年度に比べて高さは劣る分、求めるのは常に4枚のスパイカーが絡むスピード感あふれる攻撃。「今年のチームは誰が出てもある程度、高い質で戦うことができると思います。お互いに成長し合って、誰が出ても同じバレーができたら」と期待の新1年生も交えながら、競争の激しいチームを目指す。
今大会は梅川前監督がコーチ、そして高橋が監督としてチームを率いた
刺激を受ける存在は、高橋新監督自身にもいる。同じ2001年生まれには、SVリーグで活躍する選手が多い。髙橋藍(サントリー)、水町泰杜(WD名古屋)を筆頭に、後藤陸翔、伊藤(ともに東京GB)、藤原直也(STINGS愛知)、工藤有史(VC長野)、山田大貴(東レ静岡)らのスパイカー陣。そして、リベロにも高木啓士郎(広島TH)、武田大周(東レ静岡)、荒尾怜音(ヴォレアス)など、主力を担う選手たちがそろう。
「自分の学年には活躍している選手がすごく多い印象があって。高校のときに練習試合などで話していた人たちがどんどん上の世界に行ってしまった感覚もあります。みんなは上のレベルで頑張っている分、自分はSVリーグや日本代表で活躍できるような選手を育てられればと思います。一緒に戦ってくれたらすごくうれしいですね」
監督デビュー戦となった今大会は、準々決勝で浜松修学舎高(静岡)にフルセットの末に敗れた。「去年1年間ずっと勝ち続けて、この負けはすごくいい経験になったんじゃないか、って。今のままではダメだと気づいてくれればいいと思います」。教え子たちがトップリーグで輝く日を目指して、高橋新監督の挑戦も始まった。
たかはし・まさき
2001年8月9日生まれ。駿台学園中→駿台学園高→日本大
文/田中風太(編集部)
写真/石塚康隆(NBP)、中川和泉、編集部
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