WEB限定コーナー始動! どうも、月バレ編集部のGUCII(グッチー)です。FIVBネーションズリーグ2019が日本でも開催され、バレーボールは代表シーズンの真っ最中。さて今年はワールドカップバレーイヤー、来年は東京オリンピック、そして海外でプレーする日本人選手も増えてきました。そんな中で、もっともっと海外の情報を月バレからお届けしたい!ということで、新コーナーが誕生しました。
さぁ、皆さんご一緒に。月バレ!ザ・ワールド!
【GUCIIの 月バレ! ザ・ワールド】vol.1
■ブラジル男子/イオアンディ・レアル、ふたたび国際舞台へ
“鳥人軍団”キューバ男子代表として活躍
バレーボール界において、世界のトップに君臨し続けるブラジル男子代表。世界選手権は2002年から2010年まで3連覇を達成、2016年リオデジャネイロオリンピックで金メダルを獲得した。昨年の世界選手権では最後、ポーランドに敗れたものの、5大会連続で決勝進出を果たした。
そのセレソン(=ブラジル代表)に今年、新たな顔が加わった。身長202センチ、最高到達点361センチを誇るアウトサイドヒッター、イオアンディ・レアル。その名前を以前に聞いたことがある人もいるかもしれない。かつてはキューバ代表の一員としてプレーしていたアタッカーである。
1989年ワールドカップバレーで優勝、1990年の世界選手権で準優勝を果たしたキューバ男子代表は、抜群の身体能力を生かした攻撃力で世界を席巻し、そのさまは“鳥人軍団”と称された。ジョエル・デスパイネ、レオネル・マルシャル、ロベルランディ・シモン、オスマニー・ユアントレーナといった面々が国際舞台で活躍し、いま現在、世界で指折りのアタッカーとうたわれるウィルフレド・レオンも代表を背負った。レアルもその一人で、2010年世界選手権ではシモンやレオンとともに銀メダルを手にしている。
その後キューバのバレーボール界が浮き沈みを繰り返す中、やがてユアントレーナはイタリアへ、レオンはポーランドへ、それぞれ帰化という道を選択する。そして、2014年、レアルはブラジルへの帰化を申請し、翌年、国籍を取得した。そこからはFIVB(国際バレーボール連盟)の規定上、代表資格を要するまでに期間(4年間)が設けられることになり、『イオアンディ・レアル』の名前はナショナルチームによる国際大会で見られなくなったのである。
代表入り前年、ブラジルからイタリアへプレーの場を移す
ブラジル国籍を持ちながら、代表チーム入りはできないあいだも、レアルは所属クラブでその高いレベルのパフォーマンスを維持していた。2012年からブラジル・スーパーリーガの強豪サダ・クルゼイロに所属しており、2015年には世界クラブ選手権でチームを優勝に導くとともに、自身もMVPに選出される。翌年も同大会で連覇を達成。2017年は南米クラブ選手権を制し、こちらもMVPに輝いた。
そして、いよいよ“代表入り解禁”となる2019年シーズンを前に、レアルはプレーの場所をイタリアへ移す。入団先はイタリア・セリエAの強豪、ルーベ・チヴィタノーヴァだった。
すでにルーベでは、キューバ代表の“先輩”ユアントレーナが活躍しており、また同じタイミングで、サダ・クルゼイロでともに戦っていたシモン、ブラジル代表の司令塔ブルーノ・レゼンデが入団することに。カリブ海・南米大陸色を濃くしたチームに加わるにあたり、レアルは意気込みをこのように語った。
「ブラジルでは多くの栄光を手にすることができました。新しい挑戦としてイタリアを、そしてルーベを選びました。ここには親友のユアントレーナやシモン、そしてブラジル代表で一緒に戦うブルーノがいます。目標は、優勝です」(2018/19シーズン直前会見にて)
ルーベではユアントレーナの対角に入り、切れ味鋭いスパイクを炸裂。特にプレーオフに入ってからはギアをまた一段と上げ、クオーターファイナル初戦(対ヴェローナ)では28得点と大暴れを見せた。その後も20得点越えを連発し、スクデット(リーグタイトル)獲得に貢献、ファイナルの3日後に臨んだ2019ヨーロッパチャンピオンズリーグでも頂点に輝いた。
ネーションズリーグでセレソンデビュー
タイトル獲得を至上命題としたルーベにおいて、見事、ミッションを達成したレアル。イタリアの地でも世界トップレベルのパフォーマスを証明してみせると同時に、その期間は自身にとって代表活動に向けた準備にもなった。
「ルーベで、ブラジル代表のキャプテンを務めるブルーノと一緒にプレーすることができたのはとても光栄でしたし、彼からはセレソンの特徴など、いろんな話を聞かせてもらいました。彼のおかげで、代表チームになじむことができました」(レアル)
クラブシーズンを終えてまもなく、レアルは代表に合流し、ネーションズリーグのメンバーに登録される。国際大会デビューは、大会の予選ラウンド第1週の第2戦(対オーストラリア)。フルセットにもつれた試合の中で、レアルはフル出場を果たし、14得点で代表デビューを飾った。
続く第2週の日本ラウンドでは、3試合すべてに出場。第4戦(対イラン)では16得点、第5戦(対日本)では15得点、第6戦(対アルゼンチン)では18得点とコンスタントに得点を重ねた。中でも第5戦では、高い打点からスパイクを打ち込み、サービスエースこそ1得点だったが、強烈なジャンプサーブで日本のサーブレシーブを崩すなどインパクトを残した。
予選ラウンド第2週を終えて、ブラジル男子代表のレナン・ダルゾット監督はレアルをこう評価した。
「彼がいい選手であることは言うまでもありません。徐々に彼は、チームにフィットしています。合流してまもないので、ディグやサーブレシーブといったディフェンスシステムに関してはこれから上げていく必要がありますね」
「全力でプレーし結果を出す」。それがミッション
昨年の世界選手権でブラジルは、リカルド・ソウザ(ルカレリ)を欠き、オポジットのバラセ・デ・ソウザと、アウトサイドヒッターのドウグラス・ソウザが奮闘を見せたものの、ポーランドの堅固な守備を打ち破るまでには至らなかった。
今年、レアルが加わったことで、その攻撃陣はさらに分厚くなる。現に、ネーションズリーグでは毎試合、アウトサイドヒッター2人を、主にレアル、ルカレリ、ドウグラスからチョイスし、組み立てている。
そんな状況を「喜ばしく感じている」と語った指揮官の目に映る、レアルの人柄とは。
「プレーだけでなく、日頃の練習からとても頑張り屋、です。与えられた指示に対して誠実に応えてくれるタイプ。彼のいいところ、強みを生かしながら、もっともっと代表にフィットするように、監督としても全力を尽くしていきたいと思います」
ブラジル代表をさらに高く押し上げるピースとして、レアルに寄せられる期待は大きい。国を背負って戦う、その舞台に舞い戻ってきた本人はこう語った。
「今年からセレソンでプレーすることができるようになって、とにかくうれしいと感じています。
自分の仕事を全力で一生懸命に果たすこと、それがこのチームにおける私のミッション。いいプレーをお見せすることが、いちばんの大きな目標です」
カリブ海から南米大陸へと移ったスパイカーは、そのアタックでふたたび国際舞台を席巻することだろう。イオアンディ・レアル、世界の男子バレーボール界の主役候補がカムバックした。
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著者紹介:GUCII(グッチー/坂口功将)。2016年春入社。月バレ編集部に配属後、本誌で『WORLD VOLLEYBALL NEWSPAPER』、「月バレ.com」では『WEEKLY SERIE A』を担当。昨年、世界選手権の男女両ファイナルを取材した唯一の日本人記者という称号を得る。だが、英語が特に話せるわけではない。