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春高バレー月バレ便り

東福岡高 成就させた日本一への思い 夢をかなえた願望ノート【月バレ2021年3月号】

  • 2021.12.31

 

 第74回全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高バレー)は2022年1月5日(水)に開幕する。昨年度の第73回大会は東福岡高(福岡)が5年ぶりの頂点に立った。最優秀選手賞を獲得したエース柳北悠李(現・東亜大)の活躍はもちろん、「強い願望」でチームを引っ張った2年生の存在も大きかった。それぞれいかにこの1年を乗り越え、頂点にたどり着いたのか。月刊バレーボール2021年3月号に掲載された選手たちのバレーノート秘話を再掲載する。

 

――――――

 

三冠戦士と重なる2年生の姿勢

 

 待望の瞬間は静かに迎えた。エース柳北悠李のバックアタックで試合を決め、選手たちは感情を爆発させた。しかし、無観客のスタンドからはもちろん歓声はなく、優勝後に胴上げもしない。藤元聡一監督にとって3度目の頂点は、これまでとは違う景色だった。だが、そんな特別な大会であっても、頂点に立つ選手たちにはある共通点があった。

 

決勝では3-1で駿台学園を下して頂点に立った

 

 「『日本一になりたいか』と聞けば、『なりたい』と言う子は全国に何万人といると思います。でも、実際に寝ても覚めてもそんなことばかり考えている人間は多くない。これまで優勝してきたときは、僕と子どもたちの「日本一への願望」はいつも同じくらいでした」

 

 藤元監督が歴代のメンバーと比べても、入学して1、2ヵ月で「目の色が違う」と感じたのが、今大会でスタメンに名を連ねた2年生たち。その姿は2015年に三冠した永露元稀(ウルフドッグス名古屋)がいた代に重なるという。昨年までは一人もレギュラーになれなかったが、藤元監督は強い思いを感じていた。「僕が『山の5合目はこうだぞ、9合目はこうだぞ』と言ったことに対し、願望が強く、来年は俺の足で頂上まで登りきるんだ、という選手は実際に準備します。言われてから登頂に必要な道具を買おうとする人間とはそもそも目の色が違うので。それは現場にいるとわかります」。

 

 その願望を実現するための一つの手段として、東福岡にはバレーノートがある。毎日提出する決まりこそあるものの、形式は決まっておらず、書き方は選手によってそれぞれ。また、藤元監督は目を通すが、必ずコメントを書いて返却するわけではない。意見交換のためではなく、選手自らが成長過程を記録することを目的としているからだ。「『これだな』という感覚をつかんでも、翌日にできないこともあるわけですよね。でも、同じ生活や行動をしてみるとできることもある。自分なりに感覚をものにするための行動記録なんです」。

 

 「僕たちはコツコツすることだけが武器だと言われているので」と、中でも真摯に取り組むのが葭原昂大と坪谷悠翔。葭原は2018年のJOC杯を制した福岡県選抜のキャプテン。坪谷は中之口ジュニア(新潟)で小学6年生時に全国を制し、上記のJOC杯では優秀選手に選ばれた。高校では日本一になりたい、と春高を制した先輩たちの姿に憧れて進学を決めた。入学してノートを書き始めた坪谷は、「読み返したら自分のためになるな」と効果を実感。小学生のころから書く葭原は「高校に入って見る世界が変わった。自分がなりたい姿や、そのためにどこをつぶさないといけないか」をポイントに、少しずつ書くスタイルを変えた。2人のノートは、2年間でそれぞれおよそ10冊にも及ぶ。

 

葭原のノートには、練習での内容に加え、食事の内容や、1日の流れがていねいに書かれている

 

インターハイが中止になったとき、坪谷はその思いをつづった

 

「願望を感じます。ちょっとした『これだな』を逃さないぞ、と。僕が1ヵ月間コメントをしなくても書いているので、自分のためでしかないですよね。中には僕に見せるために書く者もいますが、自分が登頂するために必要だと思っている人間のノートは違います」(藤元監督)

 

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