東北高の名脇役 武山恵太が繰り出す“小さいなりの職人芸”「春高では悔いなく戦い、日本一を取りたい」
- 2022.12.25
中学時代に①武山が所属したTEAMiは男子日本代表の佐藤駿一郎(東海大4年)を輩出したクラブチーム
中学2年生時、悔しさのあまり試合後に大泣きした
振り返れば、中学生のころから熱い思いを持った選手だった。在籍する広瀬中(宮城)のバレーボール部と併行して、県内の名門クラブ「TEAMi」に身を置く。先輩に誘われたのと同時に、「うまくなりたい。個々の力を高めたい」と自身の意欲に従った。
実は、春高県予選最終日の舞台としておなじみのセキスイハイムスーパーアリーナ(宮城)は彼にとって縁がある場所。TEAMiが毎年年明けに主催する「プリンスカップ U14東日本男子大会」の会場であり、武山もホストチームの一員として参加していた。だが、先輩たちからバトンを受けつぎ新チームとして臨んだ2年生時(19年1月)の第10回大会では、4連覇中だったチームの歴史をストップさせる結果に終わり、人目もはばからず大粒の涙を流した。
「試合中に何本も決められる場面があったのに、そこでしっかりと決めきることができませんでした。試合後半になると焦って、レシーブもきちんと上げられなくなって…。ミスが続いた自分に責任を感じて、悔しいです」
真っ赤にさせた目は、熱い思いの裏返し。その半年後、全国ヤングクラブ男女優勝大会で優勝を果たし、日本一に輝くのである。
悔しさとふがいなさのあまり、涙がとまらなかった
“自分は何を持って戦うんだ”と自問自答し、努力を続けた
本人が明かすに、高校の進学先も悩みに悩んだそう。けれども、「全国の舞台に立ちたい」という思いで、東北高の扉をたたく。
結果として勝利はならなかったが、2年生時の春高県予選決勝では負傷退場した小山に代わってコートに送り込まれると、攻守でバランスのよさを発揮した。もっとも、「自分が出るとは思ってもいなかった」とは、時効となった今だから言えるそのときの本音。もちろん高校生活ラストイヤーの今は、「自分たちの代でもあるので、『自分がやるんだ』という気持ちで試合に臨んでいます」と胸を張る。
アップゾーンからでも最前列でチームを盛り上げる姿が見られる
名門校で過ごしてきたこれまでの2年半、脇役には脇役なりの強い思いがそこにはあった。
「自分からすれば、安食と小山の2人は『次元が違う』と思ってしまうので(笑) 高さは当然違いますし、東北の伝統であるブロックも技術に関しては、自分よりも上です。あの2人が止められたなら厳しいよな、って思うくらい信頼しています。
でも、自分が東北高の一員として“何を持って戦うんだ”と考えたときに、技術や小技で勝負するしかなかった。そこを自分はずっと磨いてきました」
高校生活3度目の春高県予選。ゆかりあるアリーナで全国大会の切符を手にし、とびきりの笑顔が弾けた。あのとき滝のように流した涙は、今となっては遠い昔の話だ。それでも―。
「中学3年目に全国大会で優勝できて、うれし涙も味わいました。ですが、高校に入ってからはインターハイや春高予選で負けが続いてきたので、その点では悔し涙のほうが多かったです。
最後の春高までに得意なプレーをさらに磨いて、苦手なブロックを克服したい。悔いのないように戦って、日本一を取りたいです」
東京体育館で、思いがあふれるときはきっとやってくる。それが喜びの味になることを願って、その技を最後まで研ぎ続ける。
春高県予選を通過し、トロフィーを手にドヤ顔
(文・写真/坂口功将〔編集部〕)
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