宿敵を撃破し、城南学園が初の春高 エース土屋「自分たちはもっとできる」【春高女子初出場校の軌跡①】
- 2022.12.27
伝統校が名を連ねるなか、今大会の春高は7チームが初出場。新たな歴史を刻んだチームの予選の戦いをピックアップしてお届けする。強豪ひしめく大阪で、第2代表(※抽選の末決定)の座をつかんだのが城南学園高。インターハイ府予選の雪辱を晴らし、初の全国大会進出を決めた
笑顔で集合写真に収まる城南学園の選手たち
代表決定戦はフルセットにもつれ込んでいた。廣島慎太郎監督の脳裏に、嫌な記憶が浮かぶ。「インターハイ予選の再来やな…」。相手コートには四天王寺高。第1セットを先取しながら、第2セットを「19-25」で落としたシチュエーションは、インターハイ府予選のベスト4リーグと同じ。勝てば初の全国大会が決まる一戦で、ジュースの末に敗戦。エースどうしの打ち合いを制することができず、選手たちは大粒の涙を流していた。
インターハイ予選ベスト4リーグで四天王寺に敗れ、肩を落とす西碧月
今回の対戦ではサーブレシーブが崩れて第2セットを落とし、指揮官が「弱気な面が出た」と振り返るなか、第3セットを迎える直前だ。選手たちが明るい声を響かせた。「できる、できる、できる!」。エースの土屋美咲がその意図を明かす。
「城南(学園)は勢いを大事にしないとあかんと思っています。インターハイ予選は2セット目で勢いがなくなってやられてしまったので。流れを切るための暗示みたいなものです(笑)」
序盤こそ相手エースのスパイクを止められず、6-9とリードを許したが、中盤に逆転。すると、土屋がギアを上げる。「ボールを下にたたこうとしてしまって、ブロックにかかったり、相手のチャンスボールになっていました。でも、最後は自分の高さを生かして、相手コートを見た決め方ができるようにしました」。インナーにも打ち込める幅の広いスパイクで、4連続得点。豪快なガッツポーズでボルテージを上げ、相手を突き放した。
第3セットはエースの仕事をまっとうした土屋
インターハイ予選の敗戦から
四天王寺高対策を徹底
昨年度の春高代表決定戦からメンバーは変わらない2年越しのチーム。スタメンの平均身長は166.8㎝と決して高くないが、テクニックのある選手たちがそろい、今季は初の全国大会出場が本命視されていた。だからこそ、インターハイ府予選敗退のショックは大きかった。土屋は「自分が決めきれへんかった思いがいちばんあったので。予選が終わって切り替えるのが難しかった」と引きずったが、廣島監督が「ライバルである四天王寺さんに勝つという意識を持ってやってきました」と導いた。
両エースを軸に攻撃を展開する相手を意識し、ブロックとレシーブを強化。「きょうは何本かブロックアウトを決められましたが、(ボールを)コートの中に閉じ込めよう、という練習をしてきました。四天王寺さんのパワフルなスパイクはさすがでしたが、よく止めてくれました」。第3セット終盤にはミドルブロッカー重留美来のブロックが炸裂した。さらに、土屋が「最初は上げられませんでしたが、徐々に自分たちの得点にできた」と振り返るように、相手エースのスパイクにも粘り強く耐えて主導権を握った。
勝負どころでブロックを決めた重留
宿敵を破り、悲願の舞台に立つ。「創部初ということで、未知なる世界に飛び込むイメージです。彼女たちが勇猛果敢に実力を発揮して、輝くプレーを見せてくれたらと思っています」という指揮官の願いに、選手たちも応えるつもりだ。土屋は「自分たちが1年生のときはコロナ禍だったので、そもそも練習ができないことが多くて。春高に出ることにクエスチョンマークがありました。でも、今は夢じゃなくて目標。自分たちはもっとできるし、全国の相手にも勝てると思います」と力強く言いきった。
四天王寺高
両2年生エースを軸に
来季のリベンジを誓う
敗れた四天王寺高は、今夏のインターハイに続く全国大会を逃した。中曽舞、近藤さらの両2年生エースが鋭いスパイクを放ち、第2セットを奪ってフルセットに持ち込んだが、最終第3セットは相手の堅い守りを打ち破れず。宿里翔監督は「最後は相手の意地が上回ったかな、というところ。そのなかでもよく頑張ったと思います」と振り返った。
インターハイ府予選では10年ぶりに金蘭会高に黒星をつけた。インターハイの本戦、さらに国体にもメンバーが出場し、大舞台の経験値を積んだ1年。指揮官は「できる経験はすべてしたと思うので、来年は言い訳できません。2年生主体の若いチームなので、頑張ってもらいたいです」と期待を込めた。
来季はさらなる活躍が期待されるエース中曽
代表決定戦の結果は以下の通り。
城南学園高 2(25-23、19-25、25-18)1 四天王寺高
文・写真/田中風太
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