第72回春高/鎮西高・水町が見せた最後の姿
- 2020.01.09
駿台学園高との準々決勝。全開プレーを貫き、戦いを終えた
大会前に“激戦区になる”と予想していたトーナメントは、なぞってみれば、かつてのJOC杯で頂点へと駆け上がった道のりを再現するかのような対戦カード。
続く駿台学園高戦で、水町は一段とギアを上げた。というよりも、あの楽しくてたまらなかった大会で見せた、本来のプレーそのものだった。
駿台学園高の組織的なブロックシステムに対して、この大会中はまるで見られなかったステップワークを繰り出して助走に入る。サーブレシーブを返球すると、すぐさま攻撃に転じて、前衛後衛お構いなしにスパイクを打ち込む。
第1セットを落としたが、もう負けられない第2セットの終盤で競り合う中、セットポイントからバックアタックを炸裂。握りこぶしを作り、吼える。すでに勝利への執念は、水町の身によみがえっていた。
この試合で、公式戦ではJOC杯の決勝以来に水町と対峙した駿台学園高の伊藤も、「しっかり3枚ブロックをついても、それを越えてくる。あらだけボールが集まって、自分たちのブロックを攻略して、レシーバーが拾えないくらいのスパイクを打ってくる。彼の強さそのものに、尊敬します」と、そのすごさをあらためて実感するほどだった。
だが、水町の力闘はここまで。第3セット、駿台学園高のマッチポイントから水町はバックアタックに入り、相手ブロックに阻まれてもなお、セッター前田澪から託されるトスを打ち込む。3度目のアタックがブロックされ、ボールがコートに落ちた瞬間、戦いは幕を閉じた。
試合直後はプラカードで隠してはいるものの、大粒の涙がほおをつたった。それでも、すっきりとした顔で、駿台学園高の森居たちへジョークを飛ばしながら会場を去る。
大好きなバレーボールを全身で表現した。勝ちたくて力を振り絞り、負けて感情があふれ出た。
それが最後の春高バレーで、水町泰杜が見せた姿だった。
(取材・文/編集部 坂口功将)
1月17日発売予定の『月刊バレーボール』2月号では
春高バレーの全チーム、全試合を掲載!! 水町選手のほか、大会を彩ったプレーヤーたちの姿も。お楽しみに♪