【リベロがBクイック】イタリアンジェットコースター【世界バレー編最終回】
- コラム
- 2018.09.20
月バレ.COMをご覧の皆さん、こんちはっす。「リベロがBクイック」世界バレー編、カメラマンN、帰国するため最終回っす。
世界バレー1次ラウンド、プールAフィレンツェでの最後の試合、イタリア対スロベニア。第1セットを三階の観客席の間の通路で撮影していた僕は、隣でずっと立ちっぱなしでイタリアを応援する女性ファンの興奮ぶりに驚いていた。ここまでもイタリアの観客たちの熱狂ぶりに慣れたつもりでいたが、彼女の応援する熱量は簡単にそれを上回っていく。得点した選手の名前を叫び、身体中に喜びをみなぎらせて、腕を振り上げる。失点したことに怒り、いら立ち、スラングを叫ぶ。この周辺に座るどの男性の観客よりも、はるかに力強くだ。かと思えば、撮影した写真を僕がタイムアウト中にカメラで確認していると、それを覗き見て、イタリアの選手の撮れ具合に満足してくれたのか、にっこりと、とてもキュートな表情で微笑んでくれる。感情の振り幅がまるでジェットコースターみたいだなと思いながら、別の撮影ポジションに行くために、そこを離れた。
思えば、今回の世界バレーの取材もジェットコースターのようだった。
何度か訪れたイタリア取材でできた友人たちに再会できたことは、本当に嬉しかった。でもまた必ず会えるかなんて保証のないさよならの時間は、いつまでも寂しかった。撮影がうまくいって手応えのあった試合があるかと思えば、あれは幻だったのかというような手応えの試合もあった。町で立ち寄ったカフェの店員さんがすごく気さくで楽しい時間を過ごせたこともあれば、なんとも素っ気ない接客のお店に入ってしまいコーヒーを一杯飲み干すまで居心地が悪くてしょうがない時間を過ごしたこともあった。直前に行ったアジア大会の取材で崩した体調がなかなか回復せず、ずっとこの不調が続くような気持ちになっていたが、気が付けば何事もなく元気になっていた。つまり、いいことも悪いこともあった。
スロベニアに第1セットを取られたイタリアは、その後3セットを連取して勝利した。プールAの全試合が終わり、同時に僕のイタリアでの世界バレーも終わりを迎えた。喜ぶイタリアの選手たちを見ながら、熱狂的な女性ファンのことを思い浮かべる。きっとあの女性ファンはこのジェットコースターに乗った感想を聞かれたら「また乗りたい」と笑顔で言うと思う。僕も同じ気持ちだ。