月バレ!ザ・ワールド/vol.7-トーマス・ジェスキー-
- コラム
- 2020.04.19
ハロー!! 月バレ編集部のGUCII(グッチー)です。本来であれば代表シーズンが本格化する時期ではありますが、先行きは不透明。世界トッププレーヤーたちの姿をまた見られる日が待ち遠しいですね。ということで、今回は自分が取材させてもらってきた中で印象的だった選手を紹介。(Photo:FIVB)
それではご一緒に。月バレ!ザ・ワールド!
【GUCIIの 月バレ! ザ・ワールド】vol.7
■アメリカ男子トーマス・ジェスキー、お気に入りの日本でさらなる栄光を
アメリカで開催された2019FIVBネーションズリーグ男子ファイナルラウンド
昨年7月12日、2019F I V Bネーションズリーグ男子大会のファイナルラウンドは3チーム1組、計2グループで争われるファイナル6の最終日を迎えていた。そのうちの一つ、アメリカ、フランス、ロシアによるプールAは、前日にアメリカとロシアのセミファイナル進出がすでに決定。この日のアメリカ対ロシアの一戦は、いわば消化試合だった。
その舞台はアメリカ・シカゴの、イリノイ大学内の施設であるクレディットユニオン1アリーナ。この試合の観客数は3000人足らずで、1万人収容の施設からすれば物足りない。そもそもアメリカにおいてバレーボール自体、国内プロリーグが存在しないこともあってか、アメリカンフットボール、バスケットボール、野球、アイスホッケーの“アメリカ4大スポーツ”と比較すると、その人気は見劣りすると言わざるをえないもの。
それでもナショナルチームでいえば、男子は2016年リオデジャネイロオリンピックや2018年世界選手権で銅メダルを獲得し、女子はネーションズリーグで2018年に初代女王に輝いたのち、翌年2連覇を達成している。また、カレッジバレーボールも試合となれば1万人の観客が体育館を埋め尽くす。どんなスポーツであれ、そこに注がれる熱量と文化は確かにこの国に存在する。
そうして始まったアメリカとロシアの一戦。ロシアは主力選手を温存し、アメリカも2セットを連取したところで、3セット目からはサブメンバーを投入した。そんな中でもフル出場を果たし、観客の声援を集めたのがアメリカのアウトサイドヒッター、トーマス・ジェスキーだった。試合ではコンスタントに得点を重ね、両チーム通じて最多となる12得点をマークするなどチームをストレート勝ちに導いた。
右腕に刻まれたタトゥーと、日本への思い
その試合後、ジェスキーはスタンドへ駆け込み、観客たちと喜びをわかちあった。その中には、旧知の仲もいたのだろう。イリノイ州ヒンスデール出身の彼にとって、シカゴはふるさと。競技人生においても高校、大学を過ごしてきた地元であり、代表の一員として凱旋した喜びはひとしおだった。
誰よりも長く、スタンドでの特別な時間を味わったジェスキーがようやくミックスゾーンに姿を表したころには会場の照明も落とされていた。そうして、この日の感想を聞くと、「ロシアはいい選手がそろっているので、ビデオで対策しました。お互いに勝ち上がることは決まっていたけれど、3-0で勝つことができてうれしいです」と話してくれた。
彼を見ていて、ふと気づいたのは右腕の内側に刻まれた五輪マークのタトゥー。聞けば、2016年のリオデジャネイロオリンピック以降に彫ったものだそう。
「私はリオデジャネイロ大会でプレーしました。オリンピックはスポーツの最高峰の舞台。そこでの特別な経験の一部として、刻むことにしたのです。フィジカル、メンタル双方をこれからも磨いていきたい、またメダルを取りたい、そう思っています」
それはオリンピアンとしての証しでもあり、さらなるレベルアップへの誓いでもあった。
そんなジェスキーへのインタビューは最後、日本の話に。シカゴでの日本人記者の姿が珍しかったのか、「日本から来たのですか?」という逆質問に筆者が「イエス」と答えると、彼は目を輝かせた。
「とても気に入っている国なんです! 素晴らしい人たちばかりですし、どれもが美しい国ですよね。It’s awesome!!(最高です!!)」