月バレ!ザ・ワールド/vol.8-キューバ男子-
- コラム
- 2020.04.26
時速130キロ超の弾丸サーブを放つ“地上最強アタッカー”レオン
同じく、オリンピックでのメダル獲得をにらむポーランド男子も強力な新兵器を加えた。それが、レオンだ。
14歳でキューバ男子に選出されたレオンは鳥人軍団の名を象徴するような跳躍力と迫力満点のスパイクを武器に、またたくまにその名を世界のバレーボールシーンで轟かせた。2014年以降は母国のクラブを離れ、やがてポーランドの市民権を獲得してから代表の合宿に参加する様子などは報じられていたが、実際に登録されたのは2019年度。
メンバーが発表された際には、自身のSNS上で「一員になれたことを誇りに思います」とレオン。やがて7月に正式に“解禁”となり、同月27日と28日に地元で行われたオランダ男子との親善試合で、ついに紅白色のユニフォームを着てコートに立った。
その後の東京2020オリンピック世界大陸間予選を通して出場機会を増やしていき、ヨーロッパ選手権を戦ったのちにシーズンを締めくくるワールドカップバレーへ。大会では、ベストアウトサイドヒッターに輝く活躍ぶりだった。
ただ、否応がなしにメディアが集まることへの配慮からか、チーム側の以降によりレオンが取材の場に登場することは皆無に等しかった。かといって、それは特別扱いの類ではなく、例えばチームメイトにちょっかいを出される姿からは、仲の良さが十分に感じられた。
ワールドカップバレー後も、所属するセリエAのペルージャでは、ポーランド男子のフィタル・ヘイネン監督が指揮をとっていることは好材料だ。ヘイネン監督も「代表にとって有益なこと」と明言し、「クラブシーズンを通して、レオンを含めた構想を練ることができる」とにんまり。世界選手権2連覇中の王者に加わった“地上最強アタッカー”。それは他国にとって脅威以外の何物でもないだろう。
今なおトップレベルのパフォーマンスを放つユアントレーナとシモン
レアルやレオンのように、帰化という道を選択した元キューバ代表といえば、現在イタリア男子のエースとして活躍するオスマニー・ユアントレーナもその一人。2019年は代表として参加する大会を絞っていたが、それでも8月の東京2020オリンピック大陸間予選では気迫満点のパフォーマンスでチームを牽引。セルビアとの最終戦ではマッチポイントから最後は自らのアタックで、東京行きの切符をつかみとってみせた。
ユアントレーナ自身も長らく世界のトッププレーヤーとして名を馳せ、クラブチームではセリエAのトレンティーノでプレーした2009/10シーズンから2012/13シーズンの間に世界クラブ選手権4連覇の偉業を達成(うち3大会でMVP)。2015/16シーズンからはルーベに入団し、キャプテンを務めた2019/20シーズンは自身5度目の世界クラブ選手権制覇を果たした。
また、そのルーベにはユアントレーナやレアルのほか、もう一人の“鳥人”がいる。身長208センチのミドルブロッカー、ロベルランディ・シモンだ。今でこそ最高到達点は358センチとなっているが、かつては380センチに到達したほど。代表では2010年世界選手権以降プレーすることはなかったが、2019年の北中米選手権で復帰。そうして今年1月の東京2020オリンピック大陸間予選では全3試合に出場する。周りは20歳半ばまでの選手が並ぶ中、存在感が際立った。
結果として2大会連続のオリンピック出場は叶わなかったが、アルゼンチンのウェブサイトの取材でシモンは「このチームにはまだまだ多くの経験が必要です。それは試合だけでなく、国際レベルで戦うための日頃からの基礎的な部分も、です。今は何とも言えませんが、もし2024年のパリオリンピックに向けて私が代表にいるならば、できる限りのチームの準備への手助けをします」と語った。現在32歳のシモンは、その大きな体に膨大な量の経験値を詰め込み、次なる野望を見据えている。
レアル、レオン、ユアントレーナ、シモン。2019年はカリブ海にルーツを持つ選手たちは、それぞれ国を違えながらも代表を背負い、国際舞台で戦った。当事者たちは、このことをどう思っているのか? ワールドカップバレーのポーランド戦後の記者会見で、レアルに質問をぶつけてみた。
「特別な思いがあります。レオンとはキューバで何年も一緒に戦っていましたから。ですが今、彼はポーランド、私はブラジルに帰化しました。私自身はブラジル代表としてプレーすることをいつもうれしく思っていますし、お互いに違う国の代表として戦えることをほんとうにうれしく感じます」(レアル)
今後ますます、彼らの競演は国際舞台で見られることだろう。ネットを挟んで繰り広げられる空中戦に酔いしれたい。
◆『月刊バレーボール』5月号は好評発売中。
外出が困難な場合は…オンラインショップで!⇒コチラ
***************
著者紹介:GUCII(グッチー/坂口功将)。2016年春入社。月バレ編集部に配属後、本誌で『WORLD VOLLEYBALL NEWSPAPER』、「月バレ.com」では『WEEKLY SERIE A』を担当。2018年は世界選手権の男女両ファイナルを取材した唯一の日本人記者という称号を獲得し、昨年はネーションズリーグ男子ファイナルラウンドの取材のため単身でシカゴへ。だが、英語が特に話せるわけではない。