東京GB後藤陸翔が近畿大で着けた背番号「11」の秘話。WD名古屋のあの先輩に「もらったんですよ。ください、って」
- SV男子
- 2024.01.22
バレーボールのVリーグ男子、東京グレートベアーズに新加入したアウトサイドヒッターの後藤陸翔。つい昨年12月まで近畿大で大学生活ラストシーズンを戦っていた彼は背番号「11」をつけてプレーしていた。背番号を変更してまで欲しかったユニフォーム。そこにあった後輩と先輩の物語が今、明かされる。
後藤陸翔(ごとう・りくと/身長187㎝/最高到達点335㎝/新田高〔愛媛〕→近畿大4年、東京グレートベアーズ/アウトサイドヒッター)
昨年12月の天皇杯ファイナルラウンドで快進撃を演じた近畿大
後藤陸翔には2学年下の後輩、熊谷航との間にお決まりの儀式がある。いよいよ試合が始まる直前、同じタイミングでユニフォームに着替え、その際、短くカットしたテーピングを熊谷の手で胸番号の下に貼り付けてもらう。それでキャプテンマークを仕立てるのだ。
昨年12月10日、2人はそこでこんな会話を交わした。
「これが最後じゃないで。お前、最後やと思ってるやろ?」
「思ってないですよ!!」
「今日、勝つで。来週もあるからな」
この日は天皇杯全日本選手権大会ファイナルラウンドの準々決勝。大会初日から連日、V1勢を撃破した近畿大は、昨季Vリーグ王者のウルフドッグス名古屋との大一番に挑んだ。勝てば大学バレー引退は翌週に持ち越される。もちろん勝つ気で臨んだが、競り合ったものの敗れる結果に終わった。
その試合中、心なしか後藤はキャプテンマークに手をやっているように見えた。縫い付けやプリントではなく、テーピングのため試合後に剝がれていることもしばしば。体を投げうってプレーした証しとも言えるが、「ルール上は大丈夫なのかな?」と本人も不安を覚える。
けれども、結果的に大学生活最後の試合となったこの日は、背番号11の下にキャプテンマークがついていた。
「ほんとだ、確かに剥がれてない。なんでだろう、触っていたかは覚えてないです。でも、中野倭のオーラに触れていたのかも(笑)」
ネットを挟んで、WD名古屋のコートにその姿はあった。近畿大の2学年上の先輩である中野。後藤にとっては、特別な存在だった。
ジャイアントキリングを予感させた天皇杯ファイナルラウンド準々決勝
後藤の練習に付き添った中野
「自分が大学に入ったときに、(中野)倭さんが練習からすごいハードワークしてたんです。その姿を見て、自分もああなりたいと思いました」
入学してから間近で接してきた。ポジションは後藤がアタッカー、中野がセッターで異なるものの、“託すもの・託されるもの”としてコンビを合わせてきた。加えて、当時を振り返り「全然、結果が出なくて!!」と嘆くほどサーブレシーブに悩む後藤の練習に付き添い、助言をしたのも中野だった。
そんな存在だったからこそ、キャプテンを務めた中野が卒業し、後藤は大学3年目を迎えるにあたって決意を胸に持ちかけた。
「やっぱり自分の憧れだったので。メンタルの持ちようや練習の取り組み、意識の高さを尊敬していました。なので…、もらったんですよ。ユニフォームください、って」
学年は2つ違い。お互いを、やまと、りくと、と呼び合う仲。写真は昨年夏の近畿大オープンキャンパス特別試合「現役vs.OB」